UK司法省報告

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英国司法省 / 2020年6月

 

面会交流等離別後の子の養育に関する裁判の評価報告書

~子どもと親の安全・安心の観点から~

最終報告書

訳:離婚後の養育法制研究会

 

お知らせ

離婚後アビューズ情報センター

 

 

このホームページは、離婚後のアビューズ(ポストセパレーションアビューズ post-separation abuse。元配偶者や親という立場からの付きまといや嫌がらせ)、共同親権などについての情報を発信していきます。


離婚後も、子どもの養育のために元パートナーが協力し合うことはいっけん、好ましいことのように見えます。しかし、夫婦が別れるには理由があり、ときにそれは暴力的な関係の解消や、子どもの福祉のためだったりすらします。司法統計を見ても、離婚原因の多くを暴力が占めています。離婚後の共同養育は、別れたパートナーや子どもへの、虐待の機会を与えることすらあるのです。


 

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04/23
アメリカからの発信
母親を不当に攻撃する片親疎外の蔓延 アメリカでは親権や面会交流の紛争の際に、「片親疎外」が頻繁に注目される。片親疎外に反対する立場のジョージワシントン大学教授のMeierによれば、一般的に片親疎外とは子どもが片親に対して、不自然にその親は危険だとネガティブな感情を抱くことを指す。これは1980年代に小児精神科医ガードナーが提唱した説がベースとなっている。当時、社会問題となった子どもへの性虐待に関してガードナーは、性的虐待の訴えの大方は虚偽で、母親に洗脳された子どもが父から性虐待されたと思い込む「片親疎外症候群」を唱えた。 この理論は科学的に否定されているが、再度形を変え、再び母親が意図的に子どもを父親から遠ざけると非難する場合によく使われている。そして虐待親が「自分は被害者で、子どもが自分を恐れるのは妻が子どもにそう思い込ませた」と反論する時に強力な武器として悪用されている。(加害を被害に見せかけて立場を逆転させる戦略はDARVOと呼ばれているが、このテーマは別のブログに書く)。 この武器によって子どもを守る母親が悪者扱いされ、裁判所から親権を剥奪される、子どもとの接触を制限されることまで起きている...
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04/12
アメリカからの発信
子どもをファミリーバイオレンスから守る法 米国のNPO法人Center for Judicial Excellenceによると、2008年から2024年4月までに、少なくとも985人の子どもが離婚や別離する親によって殺害されたという。なぜ離婚や別離する親によって子どもが殺害されるのか、その動機は一般的には理解されていないだろう。しかし、この問題に深い理解を持つ被害者や支援団体は、ドメスティックアビューズと別離後の子どもへの被害が終わらないことを常に指摘してきた。その努力が実を結び、2022年版女性に対する暴力禁止法(VAWA)に、女性だけでなく子どもをファミリーバイオレンスから守る法律が盛り込まれた。この法律は、父親から面会交流中に殺されたペンシルバニア州の7歳の女児ケイデンの名を冠して「ケイデン法」と呼ばれている。 ケイデンとは ケイデン父は親密な関係を利用したDVの他にも、赤の他人に対して傷害事件を起こすほど危険人物だった。ケイデン母は離別に巻き込まれた娘に矛先が向けられることを恐れ、親子面会交流には監視が必要だと家庭裁判所に訴え続けた。家裁の親権専門調査官までもがケイデン父の精神状態の危うさを指摘したが、裁判官は父親の希望を尊重し、ま...
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2023/08/01
アメリカからの発信
バイデン政権は前政権で通らなかった女性に対する暴力禁止法(VAWA)を2022年に再承認し、念願のKeeping Children Safe from Family Violence、略して、ケイデンの法を作りました。これは全米の家庭裁判所の危機を終わらせるための最優先課題の一つです。 ケイデンとはペンシルバニア州で実父から面会交流中に殺された7歳の女の子の名前なのです。California Protective Parents Associationはケイデンの母はケイデンの父親が酷く暴力的だったことから家庭裁判所に父子面会は危険だと訴えていたことを報告しています。しかし、家庭裁判所ではその訴えは聞き入れてもらえず、ケイデンは監視なしで父親と面会しなくてはなりませんでした。2018年、ケイデンの父はケイデンの母への報復メモを残し、ケイデンをダンベルで殴り殺し、自分も自殺しました。ケイデンの母はこのひどい逆境に負けず、ケイデンの死は防ぐことができたと家庭裁判所改革に乗り出しました。 残念なことに、このようなケースは例外ではありません。実のところアメリカでは毎年58,000人以上の子どもたちが家庭裁判所から虐待親と暮らせ、面会しろと裁判所から命令されています(Silberg, 2008)。そのため、...
                                  英国司法省 / 2020年6月   面会交流等離別後の子の養育に関する裁判の評価報告書 ~子どもと親の安全・安心の観点から~ 最終報告書 訳:離婚後の養育法制研究会   Assessing Risk of Harm to Children and Parents in Private Law Children Cases Final Report   Assessing risk of harm to children and parents in private law children cases - GOV.UK (www.gov.uk)             目次 (Contents) 要旨 (Executive Summary:3) 第1章 共同代表によるイントロダクション(Introduction from the joint chairs:13) 第2章 委員会における作業の進め方について(2. How the panel went about its work:15) 第3章 法的枠組(3. The Legal Framework:25) 第4章 ドメスティック・アビューズ(DA)その他の危害リスクを扱う難しさ    (4. Challenges in addressing domesticabuse and other risks of harm:39) 第5章 DAの主張と立証(5. Raising and evidencing domestic abuse:48) 第6章 子どもの声(Children’s voices)(6. Children’s voices:67) 第7章 申立への対応方法(7. How allegations are dealt w...
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2021/04/02
UK司法省報告
1.      本報告書は専門家委員会の最終報告であり、エビデンスの照会(call for evidence)から得られた結果を反映している。これは、専門家、親、家庭裁判所の経験を有する子らとともに開催された円卓会議やフォーカスグループの他、イングランドとウェールズの個人と団体からの1200を超える回答を踏まえて行われた。エビデンスの大部分は、ドメスティック・アビューズ(domestic abuse・以下「DA」という。)に意を用いて得られたものである。   2.      本最終報告は、子の処遇(arrangements)に関する父母間の紛争を伴うケース、すなわち「私法上の子の手続」(private law children proceedings)として知られるケースにおいて、家庭裁判所がどの程度効果的にDAその他重大犯罪に関する主張を識別し、これに対応しているかの理解を提供するものである。   3.      本報告書は、こうした手続に関与した当事者及び子にとっての過程及び結果に関して認定するものであり、DAの被害者を含め、私法上の子の手続における個人的経験を有する者からの個別の回答から結論を導き出している。委員会は、個々のケースの記録を検証することはできなかったが、エビデンスの照会、...
  2019年に、家庭裁判において、私法上の子の事件の新受件数が54,920件あった。これらの内で、子の処遇やコンタクト(面会交流)事件では、ドメスティック・アビューズ(domestic abuse、以下「DA」という。)の主張やその事実が認定されるものが、49%~62%の割合を占めており(注1)、総人口に占める割合と比較して、顕著に高率となっている。2019年の5月に、司法省は、家事司法制度(family justice system)全体から専門家を集めて委員会を組織し、DAその他の重大な犯罪を含む私法上の子の事件で、家庭裁判所がどのようにして子どもやその親の保護を行ったかについてのエビデンス収集を行うことを公表した。この事業の目的は、子どもをめぐる事件にかかわる者の経験を集積し、問題の全体像を把握し、状況を改善する上で有用な基礎資料をまとめる事にあった。   委員会を組織するにあたっては、家事事件に関して豊富な経験を有し、家事司法制度を支え、そこで働いている専門家から幅広く人材を集めた。法律実務家やソーシャルワーカー、裁判官、第三セクター、更に、子どもをめぐる裁判の当事者としての経験を有する人たちから情報提供を受け、より広範な人々の見解...
 本報告書の作成に際して、「私法上の子の手続」とされる、離別後に生じる子の問題に関する父母間の争いにおける、DAを含めた深刻な犯罪の主張に対して、家庭裁判所がいかにして適切に問題を特定し、それに対応するかについて、必要とされるエビデンスの提示を求めることから開始した。委員会としては、そのような手続に巻き込まれている当事者や子どもたちにとって、訴訟手続および判断のいずれにとっても、より確固とした根拠となる証拠を構築 することを目指して取り組んだ。   この事業の重要性と緊急性から、委員会としては3か月以内にエビデンスの収集を終えたいと考えていた。しかしながら、実際には、非常に多くの回答が寄せられたことから、これらを徹底的に分析し検討するために、委員会ではさらに6か月の期間を要することとなった。             2.1 事業の目的 エビデンス収集のための質問事項: ・私法上の子の手続で、子どもや親がDAその他の被害を受ける危険性があるという主張に対して、家庭裁判所は適切に対応しているか?   エビデンス収集の具体的な目的は次のとおりである: ・親の関わり推定を排除する危害リスクがある場合に、実務指針の解釈を...
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2021/04/02
UK司法省報告
    この章では、DAその他の重大な犯罪の申立てやその他の証拠がある場合の私法上の子の手続に関する法律について扱う。最も重要な国内法は、1989年児童法(以下「児童法」という。)である。私法上の子の手続に関する児童法の規定は、イングランドおよびウェールズのいずれにおいても適用される(注14)。家事事件手続規則(FPR)は、家庭裁判所および控訴審家事部における児童法その他の家事事件手続に関する一連の裁判所手続規則を提供している。家事事件手続規則は、裁判所において事件を扱う際に、必要に応じて審理の進行に関する実務指針(Practice Directions)によって補完されている。裁判所は先例拘束の原則に従い、また、その内容が国内法によって効力を付与されるのが一般であるが、国際法で定められた原則を遵守しなければならない。   3.1 キーポイント 3.1.1 私法上の子の手続 私法上の子の手続とは、ケアに関する手続のように地方自治体が関与する手続(公法手続)とは異なり、両親の間の争いといったような、対立する個人の間の問題を扱うものである。この手続は子の処遇に関する命令の申請に関するものがその大部分を占めている。命令としては、子ど...
      4.1裁判所はどの程度効果的に虐待に焦点を当てているか    エビデンスの照会は、判例と調査のレビューを引いたり、家庭裁判所の専門家と利用者の視点と経験を引いて、家庭裁判所がDAその他の害リスクをどう扱っているかに目を向ける機会を提供した。以前の調査と公的データでは、一方でDAの訴えが多いのに、他方でコンタクト禁止命令、監視付きコンタクトt)や加害者向け治療命令の件数が少ないことにミスマッチが見られた(注54)。委員会は、何らかのgood practiceや広くgood intentions が払われていうことを認めるけれど、子どもと大人へのリスクを家庭裁判所が見つけ、評価し、対応するには、根深くて構造的な問題がいまだ隠れており、それがこの不一致を説明するのに役立つ。  エビデンスは、家庭裁判所がDAや子どもの性的虐待を私法上の子の手続の中で扱うやり方について広い範囲の懸念を引き起こした。 私たちのところには、DAが過小評価された、無視された、棚上げされた、信じてもらえなかったという多数の訴えが寄せられた。回答者は、DAを主張することの困難(第5章)や、こうした主張をすることが子の処遇に関する裁判所の考慮に関連付けられる(第7...
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2021/04/02
UK司法省報告
        5.1 はじめに 被害者の回答は、彼らの多くがDAの主張をする気がしないと感じていることを示していた。その主張をすることでの第一の重要な障壁は、虐待それ自体の影響に、家庭裁判所システムで働く専門家の間の無理解の影響が結びついたものである。最近まで、DAの構成要素である威圧的支配(coercive control)について司法システムにおいては殆ど理解されていなかった。特に、刑事裁判システムでは、過度に単発の身体暴力に焦点を絞り、それ以外の形態の虐待に対応しなかった。しかし、多くの被害者にとって、DAの現実というのは、彼らを絶え間ない怖れと焦燥に置くために数多くの方法を用いて、彼らの生活を細かく管理することである。被害者でも、彼らがDAを受けていて助けを求めているということを気づくのに長い時間がかかる可能性がある。司法システムが身体暴力に焦点を当てるのに対し、DA被害者は、通常、これは彼らが受けてきた虐待のうち最悪のタイプではないという。;最も大きな影響があるのは、継続して起こる心理的・情緒的虐待、威圧と支配である。この章では、DAを主張し立証することへの障壁を取り上げ吟味する。これらの障壁は、下図のようにまと...
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2021/04/02
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  6.1 はじめに   調査と回答の両方から得られたエビデンスが示す重要な点は、あまりにも多くの場合、裁判手続(court process)において子どもの声が聞かれなかったり、様々な方法でミュートされたりしていることである。委員会はDAを経験したかなりの数の子どもが、裁判手続中に彼らの意見や経験について相談されていないことを発見した。多くの回答は、相談が行われたとしても、相談は短く、子どもたちがコンタクトしたいという時にだけ「聞かれる」という。また、命令が下された後、その監護の取決めが子どもたちにどう作用しているかについて、子どもたちが聞かれることはほとんどないことも明らかになった。   ほとんどのグループ、特に法律とソーシャルワーク/DAの専門家たち、子ども/若者と母親たちは、子どもの声が聞かれ、裁判の決定に組み込まれるかについて懸念を挙げた。これらの懸念は、先行研究から得られた知見と一致している(注84)。 これとは対照的に、父親のグループやセラピストから提出された意見の中には、子どもの声があまりにも注目されすぎていることを示唆するものもあり、子どもは暗示にかかりやすく、子どもの意思や心情を引き出すプロセ...
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2021/04/02
UK司法省報告
    7.1はじめに この章では子の処遇手続におけるDAの主張に対する家庭裁判所での手続について検討する。この章で委員会は実務指針12J(PD12J)が実務でどのように実施されているかについて得たエビデンスを見る。   エビデンスは、PD12Jが意図されたとおりに機能していないという懸念を生じさせた。それが一貫性なく実施され、そして子どもや大人の虐待被害者をさらなる危害から保護するのに効果的でない懸念があった。   このエビデンスは、2014年に改訂される前と後の、従前のPD12Jに関する調査で明らかになったことと一致している(注106)。PD12Jの2017年の改訂に関する体系的な実証研究はなかった(注107)。私たちは2017年改訂の影響についてさまざまなエビデンスを得た。たとえば、司法円卓会議の参加者とライツオブウーマン(Rights of Women)は2017年以降、より多くの事実認定の聴取が開催されていることを示唆した。一方で、ウェルシュ・ウーマンズエイドは、何人かのスペシャリストサポートワーカーが、2017年のレビュー以来、実務指針12Jが一貫して適用されているのを見たことがなく、そして変更以降、どのように結果が改善されたかについての例を示す...
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2021/04/02
UK司法省報告
「あなたが怖くて続けることができないために、早い段階で合意に達するならは、加害者は、証拠を提出したり、彼の主張を立証したり、尋問されなくて済むんです。彼は家庭裁判所を利用して、あなたとあなたの子どもを脅迫し、さらに虐待します。自分がとても恐れていた人物と裁判手続をしていく恐怖と、言葉で表現できないストレスを言い表わすことはとてもできません。」母親、エビデンスの照会         8.1はじめに この章では、私法上の子の手続の当事者の経験について検討する。エビデンスは、DAの被害者にとって、裁判手続の経験は、身体的な安全への懸念に影響を受けることを示している。さらに、彼らの経験は、DAの結果として経験したトラウマによって根本的に影響を受ける。文献は、このトラウマが身体的、心理的および認知的影響があることを示す。その影響は、虐待者を常に怖がる、虐待者に近接している(またはその発生を見越す)ことに対して制御できない身体的または感情的な反応を伴う、出来事を明確にあるいは順序だって思い出したり説明したりできず、虐待について語ったり質問されたりするとき、フラッシュバックまたは再トラウマ(二次受傷)を経験する...
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2021/03/31
UK司法省報告
 9.1 裁判所のアプローチ   委員会に寄せられたエビデンスは、文献と判例レビューとともに、私法上の子の事件(private law children’s case)で家庭裁判所が命令を作成する際の4つのテーマを浮かび上がらせた。これらは:子どもたちはその別居親とコンタクトすべきであること、制限されたコンタクトは制限なしのそれへ発展するべきであること、共同養育(co-parenting)は奨励されるべきであり、親が裁判所を頼るのは最小限にされるべきこと。これらのテーマは先の章で上げられた障壁に強い影響を受けている。特に、プロコンタクトカルチャー(pro-contact culture)は、子どもたちはコンタクトをするべきである、理想的にはいかなる制限もなしにコンタクトするべきである、そして離別後の子どもの処遇の理想は共同養育であると想定する。リソースの制約は、コンセント命令(consent order)の活用やレビュー聴取の回避に力点を置くのと同様、コンタクトのモニタリングや虐待的な言動を取り扱うための介入の利用可能性と実際の利用を限定する。   9.2 子どもたちはコンタクトしなければならない 第4章で述べたように、上級審裁判所は、家庭裁判所に、子どもたちとその親たち...
  10.1 イントロダクション     情報提供の照会に対する回答において、回答者らは委員会に対し、裁判所によるコンタクトに関する命令によるDAに関する経験等、検討すべき重要なエビデンスを委員会に提供した。虐待を行う親が別居後の子及び元配偶者に与える継続的な影響に関しては(注163)相当数の研究があるが、裁判所によるコンタクト命令について従前からある研究の大半が、規模(範囲)の小さいケーススタディーの形式をとるものであり(注164)、裁判所における手続及び命令において虐待する父に殺害された子に関する事例といったものを含むようなものであった(注165)。委員会が情報提供の照会に対する回答で得たエビデンスは、そういった研究結果に実質的に付加されるものであり、そのため、本章では前章における各事例よりも、回答及び得られた結果からより広範囲に引用を行うものとする。回答者らは、家庭裁判所における命令が、子及びDAの被害者に対する継続的な虐待及び支配を可能ならしめることを報告した。また、回答者らは、裁判所の命令及び継続的な虐待の結果として、子及び成人の被害者らが負う、長期的な身体的、精神的、感情的及び経済的な...
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2021/03/31
UK司法省報告
 11.1概観   委員会に寄せられたエビデンスは、文献レビューと相まって、家庭裁判所がDAと他の重要な加害に一貫して効果的に対応するのを妨げるものとして、4つの重なり合う障壁があることを示している。 ・裁判所のプロコンタクトカルチャー ・当事者主義的構造 ・私法手続の全面にかかわるリソースの制限 ・裁判所がサイロの中で孤立して働き、DAを扱う他の裁判所や機関との協同を欠いていること。   家庭裁判所が子どもたちと大人の被害者をさらなる害から一貫して効果的に保護することを可能にするためには、図1に示すように、これら障壁に照準を当てた総合的な改革が必要である。 図1:       多数の回答やフォーカスグループの参加者の意見にあったように、委員会は、これらの変化を成し遂げるためには、私法上の子の手続を根本的に改革することが必要である、と考えている。委員会は、この勧告が、裁判官たち、Cafcass、Cafcassウェールズやその他家事事件の専門家が私法上の子の手続でその持てる力を最大限発揮できるよう彼らの力を引き出し、その結果、この勧告がDAを経験した子どもたちとその親たちに利益をもたらすことを願う。 11.2 私法上の子の手続にお...
渡辺義弘先生による、書評 梶村太市・長谷川京子・吉田容子編著『離婚後の子どもをどう守るか 「子どもの利益」と「親の利益」』の紹介です。 全文を読むことができます。                             1.はじめに  本書は、同じ編著者が世に問題提起する三部作の完結編である。  三部作を貫くテーマは、離婚後の子どもの監護をめぐる「子どもの利益」の追求と解明である。  そして、三冊目の本書は、いよいよ、「子どもの最善の利益」の内実に焦点を絞る。  本書の特徴は、学問と実務の両面から現実を照射する。それは次の2つの実践を励ます。  第1は、「離婚後共同親権法則」の立法化が、父母の高葛藤紛争の現実からいかに遊離しているかを世論に訴える実践である。  第2は、家庭裁判所実務が採用する面会交流原則的実施政策を、具体的紛争の中で苦悩しつつ 比較基準方式に転換を求める監護親たちの実践である。  以下、本書の内容を章の順序に、私見により紹介し、若干の論評をする。   書評の全文はこちらをどうぞ。コンパクトな要約も記載されています。  
渡辺義弘先生による、書評 梶村太市・長谷川京子・吉田容子編著『離婚後の共同親権とは何か : 子どもの視点から考える』の紹介です。全文を読むことができます。                               1 .はじめに昨年 7 月の新聞報道により、父母が離婚しても、双方が子どもに対し共同親権を持つ法制の導入問題が突如浮上した。そのための民法改正の検討方針を、上川法務大臣(当時)が記者会見で表明した。法制審議会への諮問は予断を許さない。 しかし、この「離婚後共同親権」法制を採用している先進諸国においても、この制度は曲がり角ともいうべき苦悩の中にある。その導入は、はたしてわが国の家事司法、とりわけ紛争家族にどのような影響を及ぼすのだろうか。 本書は、紛争家族の目線で、この法制の導入に「危うさ」を実感している学者と弁護士たちが、正面からこの法制に対決して論じた初めての論文集である。各論文はいずれも、事実と執筆者の体験に基づき、法制導入に対する警告の主張と理論を展開している。 法制を推進しようとする側は、誠実に対応する限り、これらの主張と理論を一つ一つ論破しない限り、国民に対して説得力を持たないと考える。立法化は、これら...
梶村太市・長谷川京子・吉田容子編著『離婚後の子の監護と面会交流  子どもの心身の健康な発達のために』の紹介です。  内容紹介 面会交流原則実施の弊害、共同監護の問題点を明らかにし、子の心身の健康な発達にかなう制度運用のための方策を具体的に検討する。                                 目次はしがき ◆序論/社会学者・精神科医からの問題提起 第1章 家族紛争と司法の役割──社会学の立場から………………………………………………………………千田有紀 第2章 子どもの発達と監護の裁判──科学的検討・外部臨床家との連携・検証………………………………………………………………渡辺久子 ◆新たな課題/裁判の争点から第3章 「松戸100日面会裁判」が投げかける問い…………安田まり子 ◆課題の検証と対策/あるべき監護法制のために第4章 非監護親との接触は子の適応に必要か有益か……………………………………………………………長谷川京子 第5章 「片親引き離し/症候群」批判……………………長谷川京子 第6章 フレンドリー・ペアレント・ルールは子どもを害する………………………………………………………………可児康則 第7章 司法は面会交流殺人から子どもと監護親を守れるか………………………………………………長谷川京子・吉田容子 第8章 面会交流支援の実情と限界………...