UK司法省報告

要旨

1.      本報告書は専門家委員会の最終報告であり、エビデンスの照会(call for evidence)から得られた結果を反映している。これは、専門家、親、家庭裁判所の経験を有する子らとともに開催された円卓会議やフォーカスグループの他、イングランドとウェールズの個人と団体からの1200を超える回答を踏まえて行われた。エビデンスの大部分は、ドメスティック・アビューズ(domestic abuse・以下「DA」という。)に意を用いて得られたものである。

 

2.      本最終報告は、子の処遇(arrangements)に関する父母間の紛争を伴うケース、すなわち「私法上の子の手続」(private law children proceedings)として知られるケースにおいて、家庭裁判所がどの程度効果的にDAその他重大犯罪に関する主張を識別し、これに対応しているかの理解を提供するものである。

 

3.      本報告書は、こうした手続に関与した当事者及び子にとっての過程及び結果に関して認定するものであり、DAの被害者を含め、私法上の子の手続における個人的経験を有する者からの個別の回答から結論を導き出している。委員会は、個々のケースの記録を検証することはできなかったが、エビデンスの照会、円卓会議及びフォーカスグループから得られたエビデンスは、文献のレビュー及び関連する裁判例のレビューで補われている。

 

4.      委員会は、家庭裁判所の司法制度(第11章)により今後採られるべき方策について幾つかの勧告を行っており、それは以下のとおり要約される。

 

なぜ変化が必要なのか

5.      日々、社会で最も脆弱な人の一部は家庭裁判所に救済を求めており、そこでは多くの場合非常に感情的なケースにおいて困難な判断が下されている。したがって、システムが彼らをさらなる危害やリスクから保護することができることが不可欠である。

 

6.      1989年児童法(the Children Act 1989)に規定された法的枠組においては、裁判所は、子の福祉に優先的考慮(paramount consideration)を払うことを求められる。それにもかかわらず、委員会に提出されたエビデンスは、私法上の子の手続における子及び被害者の親の主張と証明された危害に対し、家庭裁判所の制度がいかにそれらを認識し、対応しているかについて、継続的な課題があることを示している。

 

7.      委員会は、家庭裁判所の制度において一層増加するプレッシャーの下に働く人達から、優れた実践例や意志を認識する一方で、子どもや成人の双方に対する危害がいかに識別され、管理されるかに影響を及ぼすと認められた、根深い体系的な問題を明らかにした。

 

虐待その他重大な犯罪への対応における課題

8.      エビデンスの照会に対する回答者は、家庭裁判所が、私法上の子の手続においていかにDA及び児童の性的虐待に対応しているかについての懸念を提起した。

回答は、虐待が体系的に過小評価されているという感覚を強調し、それは、子どもの声に耳が傾けられていないこと、主張が無視され、却下され又は信用されないことから、リスクの評価が不十分であること、トラウマティックな裁判所のプロセス、安全でないと認識されている子の処遇、そして虐待者が訴訟を繰り返すことや訴訟を繰り返すという脅迫を通じ継続的な支配権を行使していることにまで及ぶ。委員会は、それらの問題は、検証の対象となった証拠をめぐる、次のような重要な課題に支えられたものと認定した。

·      リソースの制約: 資源の利用可能性が私法上の子の手続の需要の増大に対応するには十分でなく、より多くの当事者が代理人をつけずに裁判所に申立てを行っていること。

·      プロコンタクトカルチャー(pro-contact culture): 回答者は、裁判所が別居親とのコンタクト(contact)を実施させることを不当に優先したと感じており、その結果、DAの主張が体系的に過小評価された。

·      サイロワーキング(Working in silos 訳者注:孤立した業務遂行、縦割りにつながる): 回答は、刑事司法、子の保護(公法)と私法上の子の手続との間のアプローチと文化の違いと、家庭裁判所と他の裁判所及び家庭と協力する機関との間のコミュニケーションと調整不足を強調し、これが矛盾する決定と混乱を招いた。

当事者主義的構造(adversarial system):DA、児童の性的虐待及び自己代理に係る事件において、親たちはしばしば対等な立場にないまま、対立的構造に立たされ、子の関与もほとんど又は全くない。

DAの提起及び立証

9.      回答から得られたエビデンスは、一般に、被害者がDAの問題を提起するのに多くの障壁に直面し、その多くは、上記の問題と重複し、かつ、次に掲げる事項も含むものであることを示した。

·         子の処遇のケースにおける裁判所と専門家のプロコンタクトカルチャー: 回答は、DAがとる様々な形態についての理解不足、子と被害者の親への虐待の継続的な影響の理解不足、システマティックな虐待の過小評価又は否定、そして強力な吟味なしでの反論の受入れを強調した。

·         虐待の証拠: 被害者は虐待を証明する困難さを報告し、それは特に、単一事件や直近の身体的虐待に焦点が当てられ、「理想的な被害者」がどのようにふるまうべきかというステレオタイプな見方に直面する場合である。

·         サイロワーキング: あるシステム、例えば刑事裁判所において虐待が認定された証拠があるが、それが家庭裁判所では認識されないか、又は実質的に考慮されないことに帰結しうる。

 

10.  DAを提起するにあたっては、特に黒人、アジア系および少数民族(BAME)のバックグランドを持つ被害者にとって障壁がある。被害者や彼らを支援する専門家は、これらの障壁を、性差別や階級偏見に加えて、人種差別が関わっていると認識した。また、男性の被害者は特定の障壁に直面しており、一部の回答者は、「リアルな」被害者に関する固定観念が、信じてもらうための障害となっていることを強調している。

 

子どもの声

11.  調査及び回答から得られたエビデンスからは、DAの主張が提起された場合に、子どもの声に耳が傾けられず、又は様々な方法で沈黙させられていることがあまりに多いことが示されている。子どもの大部分は、家庭裁判所の手続に直接関与せず、父母又はケアラー(carere(s))に彼らの意見を代弁することを委ねられる。子どもの見解を有効に伝達することができるためには障壁が多く、委員会には以下のとおり強調された。

·         制限された時間: 回答は、子どもと過ごす時間を最大限にすることは信頼関係を築く上で重要であると指摘しているが、専門家の時間は限られており、相談が行われる場合には、通常、短時間であると報告されている。

·         フォローアップの欠如: 回答は、ひとたび裁判所の命令がなされた場合には、子どもはほとんど相談されることがないと述べており、多くの場合、彼らは有効かつ安全に機能しないであろう取決めとともに捨て置かれることになる。

·         リソースの欠如: 不適当なリソースは、子どもの手続への関与を妨げることになる。

·         プロコンタクトカルチャー: 回答は、選定的聴取(selective listening)を行う過程を明らかにしており、それにより非同居親と交流することを希望する子どもの声に耳は傾けられても、交流を希望しない子どもの意見は聞かれないか、又はその意見を変更するよう圧力をかけられる。裁判所の命令については、特定の状況にかかわらず、多くの場合子どもが虐待を受けるおそれのある親と共に過ごすことを優先させると報告された。

·         サイロワーキング: 回答は、裁判所は多くの場合、子どもとの密接な関係を確立し、個々の事情をより深く知り得る機関と実効的に関わっていないことを強調した。

·         複雑性: エビデンスは、子どもの見解を適切に理解し、代弁することは、子どもは様々な影響に晒されることが多く、そのうちには矛盾するものがあり得、難しいものとなり得るとしている。これには、時間とスキルの双方が必要となる。

 

12.  エビデンスにより、手続において意見を聞かれない子どもに著しい支障を及ぼすことも示された。子どもは、心情を傷つけられ、権威を疑うような心情を残し、子どもの否定的な経験によって裁判制度への信頼が損なわれ得るものである。

 

主張の対応のされ方

13.  2010年家事事件手続規則(Family Procedure Rules 2010)の実務指針(Practice Direction 12J) (PD12J)は、子の処遇のケースにおいてDAの主張がされた場合に裁判所が取るべき措置に関する詳細な指針を規定している。エビデンスは、PD12Jが意図された通りに機能しておらず、一貫性なく実施されているという懸念を提起した。

 

14.  これには以下の懸念が含まれる。

·         プロコンタクトカルチャー: 親の関与の推定、及びDAの主張がどのようなときに関連すると考えられるかに関する決定。

·         当事者主義的構造: 事実認定(Fact-finding)の期日の実施、及び公平性の認識。

·         リソースの欠如: 事実認定の手続及びリスク評価の質、裁判の継続性の欠如、法的アドバイスを得ずにPD12Jの複雑性に直接対処しようとする紛争当事者にとって重大な困難をもたらすことに影響する。

·         サイロワーキング: 事実認定と他の手続との連携の欠如に帰結する。

 

裁判所における安全と経験

15.  DAを受けた被害者にとって裁判手続の経験は、DAを受けた結果として経験したトラウマのほか、身体的安全に対する懸念により影響を受ける。この場合の結果にかかわらず、通常被害者は裁判所で安全とは感じないと報告し、提出されたエビデンスでは、被害者は裁判手続を再びトラウマをもたらすものであることが多いと考えていたことが示された。

 

16.  私法上の子の手続における各段階(裁判所に行くこと、裁判所建物自体の中、法廷内、繰り返される申立に応じるために裁判所に出頭すること)により、以下を含め、それ自体に特定の安全に関する問題を提起したことが報告された。

·         身体的安全: 多くの回答者は、家庭裁判所における手続は、適切な特別措置が講じられなかったことが多く、脅迫や身体に対する攻撃を受けやすい被害者が放置されることになると述べた。

·         精神的健康(well-being): 被害者は、手続に関与し、経験を証するエビデンスを提出することにより、再びトラウマを感じるおそれがある旨報告したが、これは現在、適切に対処されていない。

·         自ら出頭する紛争当事者: 自ら出頭する当事者に関する影響は、安全に関して特に大変な状況にあると認識されており、それは彼らが利用可能な手段及びこれを規定する準則に関する知識を持たず、かつ、それらの者に対し特別措置を求めることのできる法律上の助言が得られないためである。

·         直接反対尋問: 被害者は、虐待者が代理人を付けていない場合に虐待者による反対尋問の可能性、又は、彼ら自身が訴訟当事者である場合に虐待者に対し反対尋問しなければならないことに直面する可能性がある。

 

17.  1989年児童法第91条(14)の規定(申立禁止命令)の下になされる命令は、子の処遇命令を求める反復申立による被害者に対する一層の虐待から被害者を保護するためには、効果がないことが示されている。長年のケースローではこれらの命令は例外的であることが確立しており、命令を得る基準はあまりに過度であると認められ、他方、命令が発せられた場合の取下の基準があまりに低いという結果をもたらしている。

 

命令

18.  DAその他重大犯罪に係る事件について裁判所がする命令は、既に述べた体系的問題のもとで発せられる。これらの問題は、今後は、家庭裁判所による子の処遇命令の発し方において4つの主要な問題を生じさせるものと考えられる。

·         子はコンタクトをすべきこと: 手続の一部として虐待を主張した親及び彼らの支援に従事する専門家からの回答は、ほとんどのケースにおいて、何らかの直接交流がなお命じられるおそれがあると報告した。

·         コンタクトを進めるべきこと: 委員会が受け取ったエビデンスは、裁判所が直接交流に制限を命じた場合、その目的は、通常、無制限に交流するための「進歩」(progress)であると思われることを示した。回答は、DA加害者プログラム(DAPPs)のような介入や監視付きコンタクトサービス(supervised contact services)は、直接交流するための足掛かりと見なされ得ることを示した。

·         共同養育(co-parenting)を推進すること: 個々の事情にかかわらず、DAについて最も重大な主張が提起された場合においても、裁判所は父母が共にコンタクト処遇(contact arrangements)を促進できるように期待していたと、多くの回答者は報告した。

·         裁判所へ依存しないよう推奨されること: 回答及び従前の調査からは、コンセント命令(consent order)が日常的に出されることが示されている。虐待を受けた被害者は、安全でないと考える場合であっても、その命令に同意するようプレッシャーをかけられていると感じている。レビュー・ヒアリング(review hearing)は、その命令の機能及び安全に関する確認をするかもしれないが、あまり推奨されず、ほとんど実施されない。

19.  PD12Jにもかかわらず、回答者は、DAの特徴のあるケースとそうでないケースとの間で、命令においてほとんど差がないと感じていた。裁判所は、ほとんど常に何らかのコンタクトを命じ、多くの場合無制限に、そして虐待したとする者にその行動に対処することを要求しないのが通常であった。

 

家庭裁判所の命令による被害

20.  回答者は、裁判所の命令により、虐待したとされる者によるDAの子ども及び成人被害者に対する継続的なコントロール、及び被害者と子どもの継続的な虐待が可能になったと感じた。多数の資料は、この虐待が子どもの現在及び将来の関係に悪影響を及ぼし、身体的、感情的、心理的、経済的及び教育的な害悪を表すという長期的な影響を明らかにした。

 

21.  多数の回答者は、家庭裁判所における手続を経て、回答者及び子どもが経験した虐待の程度が悪化したと感じた。家庭裁判所の命令により、継続的な虐待を報告しようとする努力が刑事司法及び児童福祉機関(child welfare agencies)に拒絶的に扱われたという懸念がある。さらに、回答者は、虐待を受けた子が虐待をした親と交流をすることを余儀なくされたと感じたというネガティブな影響と、加害者がその行動を変えることにほとんど期待できない一方で母子がコンタクト命令に従うよう負担を強いられたことも強調した。

 

22.  多くの回答者は、虐待をした親と交流することによる長期にわたる子どもに対するネガティブな影響が、その親との継続的な関係の価値を著しく上回っていると感じていた。

 

進むべき道

23.  委員会が提出した勧告の全リストは報告書第11章において見ることができるが、次のとおり要約する。

 

24.  委員会は、この勧告により、裁判官、弁護士、Cafcass、Cafcassウエールズ、その他家庭裁判所の司法に関わる専門家が、私法上の子の手続において最善の可能性に取り組むことを可能にし、とりわけ、DAを経験した子どもと親に利益をもたらすことを望む。

 

25.  勧告は、法改正から研修の改善にまでに及ぶ。司法省は、家庭裁判所の司法システム全体にわたるパートナーとともに、その勧告を推進するとともに、これに併せて実施計画に定められた事項に取り組むものとする。これには、子の処遇のケースにおいて調査的アプローチを試験的に行い、地域と機関との連携の改善を図るとともに、子どもの声の傾聴を増進し、研修の充実を図るとともに、より一般的に、私法上の子の手続について新たに設計される原則の導入を含めることができる。

 

勧  告

1.   概要

·         委員会で得られたエビデンスは、文献的レビューを踏まえ、家庭裁判所が虐待その他重大な犯罪に対する一貫して実効的な対応を可能にする能力に関し、四つの障壁があることを示すものである。

·         裁判所のプロコンタクトカルチャー

·         当事者主義的構造

·         私法上の子の手続のあらゆる側面に影響を及ぼすリソースの制約

·         家庭裁判所がサイロで機能し、DAに対処する他の裁判所や団体との連携を欠くこと

 

2.   家事裁判制度の設計原則

·         私法上の子の手続についての基本的な制度設計の原則は、次のとおりであるべきである。

·         危害からの安全と保護のカルチャー

·         調査と問題解決のアプローチ

·         十分かつ生産的に利用されるリソース

·        異なるシステムの部分間でより有機的なアプローチを取ること。

·         手続は、子ども、訴訟当事者、DAその他の重大な安全上の懸念を中心的な考慮事項として、設計される必要がある。

 

3.   実務指示書(statement of practice)

·         実務指示書は、DAその他重大な犯罪に係る事件について、統一的かつ倫理的な方法を確保するために提案される。

·         委員会は、家事部長官(President of the Family Division)を招待し、実務指示書を促進し、それを子の処遇のプログラムに組み込ませる。

 

4.   親の関与の推定に関する検証

·         1989年児童法のセクション1(2A)における親の関与の推定の検証は、その有害な影響に対処するために緊急に行われる必要がある。

 

5.   子の処遇プログラムの改革

·         家庭裁判所は、私法上の子のケースにおいて、すなわち安全に焦点を当て、障害を認識し、問題解決のアプローチをとる、改革された子の処遇プログラムを試験的に実施し、実行すべきである。

·         子の処遇プログラムには、濫用的申立を識別し、サマリー・コンクルージョン(summary conclusion)に至るまで迅速に管理するための手続を組み込むべきである。

6.   子どもの声の強化

·         委員会は、子どもの意見聴取のための選択肢の範囲を、子の代理、代表、支援とともに、改革された子の処遇プログラムを策定し、試験的に実施する作業の一環として、より完全に探求することを勧告する。

 

7.   裁判所の安全及び保安

·         DAの被害者に対する刑事裁判における特別措置に関すDA法案(Domestic Abuse Bill)の規定は、家庭裁判所にまで拡張されるべきである。この法律は、DAに係るエビデンスがある事件又はDAを手続の対象とする家庭裁判所の手続において、直接的な反対尋問を禁止するように改正されるべきである。

·         家庭裁判所の手続に関与する成年者及び子を保護するための主要な権利体制は、事前訪問(familiarization visits)及び安全・保安の侵害に対する確実な対応を含むように、司法省 Code of Practice for Victims of Crimeをもとに、整備されるべきである。

·         申立禁止命令: DA法案には、第91条(14)の規定による命令にとって「例外的であること」の要件を取り消す措置が含まれるべきである。この措置は、1989年児童法第91条(14)の規定を修正し、改正し、又は補充するものとする。

·         委員会は、特別措置の規定及びDAの被害者に対する専門家の支援の確保について更に勧告する。

8.   連絡調整

·         全国及び地方のレベルにおいて、それぞれの地域にわたる連絡調整、継続性及び整合性のとれた機能を担う体制が整備されなければならない。委員会は、家事部長官の管理の下に、国の水準の機構が置かれるべきものと思料する。国家的メカニズムとプロセスを実行する地方レベルの処遇は、指定家庭裁判所裁判官(Designated Family JudgesDesignated Family Judges)に監督されるものとする。

·         当事者が法律上の援助を受けず、かつ、自らこれに充てることができない場合における警察開示の実施については、家庭裁判所及び政策担当者(policy representatives)とともに、緊急の配慮をなされなければならない。

 

9.   リソーシング(Resourcing)

·         委員会は、子の処遇プログラムの改定案と併せて、多くの分野への追加投資を勧告する。

·         私法上の子のケースに関して利用できる裁判所及び司法資源(これらのケースの審問をしその職務を効果的に行う人たちに対する行政上及び福祉上の支援を含む。)

·         CafcassとCafcassウエールズ

·         家庭裁判所の資源

·         法律扶助

·         専門的審査等に係る資金

·         イングランド及びウェールズのDA法加害者プログラム

·         監視付きコンタクトセンター

·         私法上の子の手続における親に対するDAに関する教育上及び治療上の規定

·         専門家によるDA及び児童虐待の支援事業

 

10.  DA加害者プログラムの見直し

·         DAPPsがDAの影響を受ける子どもと家族の被害軽減に効果的に重点を置いていることを確かなものとし、DAPPsが委員会により勧告された基本的な設計原則で支えられることを確実にするため、DAPPsの現行規定の検証を行う。

·         DAPPsは、イギリスとウェールズでより広く利用可能であるべきであり、私法上の子の手続において親に自己照会(self-referral)することを可能にすべきである。

 

11.  トレーニング

·         委員会は、家庭裁判所の司法制度のすべての参加者に対し、以下を含む幅広いトレーニングを勧告する。それには、私法上の子の手続に改革を導入し及び組み込み、一貫した実施を確保するのに役立つカルチャー変革プログラム、及び改革された子の処遇プログラムの効果的かつ一貫した実施に必要な知識の重要な分野のリストが含まれる。

·         委員会は、一貫したアプローチを確保するため、家庭裁判所の司法制度における全ての専門職と機関において多分野で実施されているトレーニングを考慮すべきことを勧告する。

 

12.  ソーシャルワーカーの認証評価

·         委員会は、ウェールズにおける私法上の子の手続でアセスメントを実施するソーシャルワーカーは、Group 3 Violence Against Women, Domestic Abuse and Sexual Violence National Training Framework standardでDAについて研修を受けるべきであることを勧告する。

·         委員会は、イングランドにおける私法上の子の手続でアセスメントを実施するソーシャルワーカーは、国家の正式認可を受けた子どもと家族に関わる実務家であるべきであることを勧告する。

·         委員会は、ウェールズにおける認可トレーニングの内容及びイングランドにおける認証評価は、必要な知識とスキルが十分評価されることを確保することを支援するため、DAの専門家によって検証されるべきことを勧告する。

 

13.  監視・監督

委員会は、以下のとおり勧告する。

 

·         DA、児童の性的虐待及びその他の保護措置に係る事件に関する行政情報の一貫した総合的な収集方法の整備及び実施私法上の子の手続において、DA及びその他重大な害悪を受けている子どもと被害者を保護するに際し、家庭裁判所の状況の監視を維持し、定期的に報告するため、Domestic Abuse Commissionerのオフィス内に、国家的な監視チームを設置する。

·         地方のラーニング・レビュー(learning reviews、イングランド)、子のプラクティス・レビュー(ウェールズ)及び家庭内での殺人に関するレビューにおいて、家庭裁判所が関与し、当該家族が私法上の子の手続において関与すること。

 

14.  更なる研究

法務省は、DA、児童の性的虐待又はその他の重大な犯罪の主張が提起された場合に、現行のCAP、PD12J及び第91条(14)の実施に関する独立した、体系的で遡及的な調査研究を委託すべきである。

「Child Safeguarding Practice Review」委員会は、ベースラインを提供するため今後12か月の間に、また、改革後2~3年のフォローアップを実施し実務状況を検討するため、私法上の子の手続におけるDAのケースの法定の国内慣行に基づく見直しを行うべきであり、また、「National Independent Safeguarding Board Wales」委員会は、ウェールズにおいて、同様の検証を行うべきである。

改革後の子の処遇プログラムの委員会の勧告を検証するために設立されたパイロット(pilot)は、裁判所記録の検討、命令、判断その他の定量的、定性的な調査方法の双方を用いて、確実に評価されなければならない。

上記で設立されるべきと勧告された国家的監視機関の付託権限は、改正後の私法上の子の問題の実施に関する将来のかつ継続的な研究の委託及び実施を含むべきである。

 

                                                                                                                                 【矢野謙次】