UK司法省報告

第11章 勧告

 11.1概観

 

委員会に寄せられたエビデンスは、文献レビューと相まって、家庭裁判所がDAと他の重要な加害に一貫して効果的に対応するのを妨げるものとして、4つの重なり合う障壁があることを示している。

・裁判所のプロコンタクトカルチャー

・当事者主義的構造

・私法手続の全面にかかわるリソースの制限

・裁判所がサイロの中で孤立して働き、DAを扱う他の裁判所や機関との協同を欠いていること。

 

家庭裁判所が子どもたちと大人の被害者をさらなる害から一貫して効果的に保護することを可能にするためには、図1に示すように、これら障壁に照準を当てた総合的な改革が必要である。

図1:

 

 

 

多数の回答やフォーカスグループの参加者の意見にあったように、委員会は、これらの変化を成し遂げるためには、私法上の子の手続を根本的に改革することが必要である、と考えている。委員会は、この勧告が、裁判官たち、Cafcass、Cafcassウェールズやその他家事事件の専門家が私法上の子の手続でその持てる力を最大限発揮できるよう彼らの力を引き出し、その結果、この勧告がDAを経験した子どもたちとその親たちに利益をもたらすことを願う。

11.2 私法上の子の手続における原則をデザインする

委員会は、私法上の子の手続の基本原則として、上記図1に示したところによるべきであると勧告する。裁判所は子どもの福祉を至高と考えている。その子どもの福祉を決定し増進するための手続は、次のようでなければならない。

・安全に焦点を当て、トラウマに敏感であること(注178)

・その子どもと家族に何が起こったのかについてのオープンな質問に基づき、

調査的で問題解決型のアプローチをとること

・効果的に仕事をするのに必要なリソースを備え、それらをこれらの基本的原則に従い効果的に用いること

・関係するシステムや手続やサービスと調整して仕事をすること

 

私法上の子の事件で司法手続は、家庭裁判所の前に持ち出されるすべての問題に考慮を払わなければならない。しかし、現在、親たちが裁判所に来た時に展開される手続は、典型的には弁護士によるものが多い。最近の調査も、私法上の子の事件で安全保護上の高度の懸念が生じたことを改めて補強した(注179)。委員会は、私法上の子の手続において子どもたちのニーズと意思が中心に据えられるべきであるのと同様に、諸手続は、当事者訴訟の本人のニーズと、DAその他の安全保護上の懸念を中心的考慮事項に据えて設計するよう勧告する(図2)。最も困難な事案と最も脆弱な参加者のためにデザインされた手続は、一般的に、より簡単な事案で子どもたちのニーズに焦点を当てることができることになる。委員会は、実際は、この改正は、安全保護懸念がなくても、私法上の子どもの事件のすべてで有益であると考える。

 

 

11.3 DAと他の危害リスクが主張された事件への一貫した倫理的アプローチ

エビデンスは、相当な数の事件において、DAの被害を受けた子どもたちと大人の被害者たちの扱いについての懸念を繰り返し報告している。これらの懸念がどれほど代表しているかはわからないが、利用可能な回答に基づき、委員会は、家庭裁判所のDA事件へのアプローチは一貫性がなく、なかには有害な影響をもたらす場合もあると結論している。それらを一貫して確認し定着させるgood practiceの実例を打ち立てるために、委員会は、実務指示書を、DAやその他の害のリスクの主張がなされた事件に適合させることを勧告する。この指示書は、以下の点を含む:

・親たちや子どもたちから上がったDAとその他安全保護の懸念の主張が、敬

意を払って扱われ、それに対して十分な調査が行われること

・手続と決定が、ジェンダーバイアス、人種差別、固定観念、偏見による推定

を含む、いかなる偏見にもとらわれることなく行われること

・裁判所の手続と施設が、すべての参加者に安全と必要な警備を提供し、再被

害を防ぎ、参加者が心理的に支えられていると感じられるようにすることを

目的としていること

・手続が可能な限り迅速に進み、遅延は最小限にされるべきであるものの、安全が最優先事項であること

・裁判所とそのシステムで働く者が、裁判所の手続を虐待や支配の手段として利用しようとする者たちに対し用心深くあること。こうした言動が積極的に見出し止められること。

・裁判所が、子どもたちへの危害とリスクの問題に対し、機関を越えた協調対応を強化すること

・子どもたちに影響する事項に関する彼ら自身の考えが、国連児童の権利条約が保障する権利に従い聴かれること。Cafcass、Cafcassウェールズ、ソーシャルワークや専門家報告がその子の望みに反する勧告をしたり裁判所がそういう決定をしたときには、その理由がその子どもに説明されるべきこと。

・DAやその他の深刻な加害の主張が事実として認められる場合に、その主張を行った基礎的理由が、可能な限り、敏感な注意深さをもって評価され取り扱われること。

・子の処遇命令の裁判が継続して安全であるか振返られ続けること。もし子どもが裁判所の命じたコンタクトに不安を感じたら、その理由が子どもにあった方法で聴きとられ、その子どもの声が聴かれ、それら懸念が適切に認められ評価されること。

 

委員会は、この実務指示書を推進するために、家庭部局長the President of the Family Divisionを招請する。委員会はまた、これが、子の処遇プログラムに組み入れられることを勧告する。

 

委員会は、その勧告のメッセージが、上訴への判断や他の重要な裁判を通じて、上級Senior裁判所で承認され強調されることを望む。この提案が実行されるなら、既存の、拘束力のある有効な裁判例(DAと危害に関連する手続や実体法を扱う)の一部は、再検討されなければならないだろうと委員会は考える。

 

11.4 親の関わりに関する推定

何人かの専門家 は、1989年児童法の1章(2A)にある親の関わりに関する推定を支持したけれども、委員会は、回答で述べられたような種類の事件においては、そういう推定はプロコンタクトカルチャーをさらに強化し、裁判所の注意をその子どもの個人としての福祉と安全に焦点を当てることから逸らしてしまうと結論するに十分なエビデンスの提供を受けた。

 

委員会は、回答で伝えられたさまざまな提案を討議し、これら意図しなかった推定の結果を回避する最良のものとして国際的に採用できるモデルを討議したが、改正に向け特定の選択肢に十分な納得を得るには至らなかった。委員会は、しかし、この推定が現在のまま残されるべきでないことは明らかであると考える。

 

われわれは、親の関わりに関する推定は、その有害な影響に対処するため、直ちに見直すよう勧告する。

 

11.5 子の処遇のプログラム

エビデンスで示された重なり合う問題を扱うための必要に関して、委員会は、家庭裁判所が私法上の子の事件における処遇のプログラムの改正を試行し提供するべきであると勧告する。改正後のプログラムは、構想上の原則として次のようなことを含むことになる;安全に焦点を当て、トラウマに敏感であること;情報共有に基づく調査的で問題解決型のアプローチ、;十分なリソースを備えそれらを効果的に利用すること;関連するシステム、手続やサービスとの調整。それもまた、前記11.3で勧告した実務指示書を実施することになる。委員会は、中央政府の、統合されたDA裁判所の試行というマニフェストに留意し、これらの 2 つの作業をまとめて調整することを推奨する。委員会はまた、家事部の司法WGの長の仕事が、将来、この提案に応じて調整されるよう勧告する。

 

委員会は、改正される子の処遇プログラムが、当事者主義的でなく、問題解決型アプローチをとるべきである、そこでは裁判官の継続性が主要な特徴であると考える(注180)。それらプログラムは次の3つの段階を含むことになる:

 

(ⅰ)最初の調査と情報交換の段階―焦点を当てるべきは、子どもに何が起き

たかを、その家族内でのあらゆる虐待の直接・間接の影響と、子どもと大

人の被害者が将来のさらなる危害から保護されるニーズを含め、理解する

ことである。情報は、将来に向け先取りする形で収集され、その家族を過

去担当した専門家を含め、すべての関連するソースから引き出される。親

たちと子どもたちは相談され、親たちはそのケースで持ち上がっている問

題に関連する情報(あらゆる形態のDAに関する心理―教育的な仕事を含

む)の提供も受ける。どんな合意もできない場合は、裁判にむけた準備が

進む。

(ⅱ)裁判の段階―これは、裁判官主導で、あらゆる危害とリスクを正確に見

出し、問題解決と将来の福祉を守ることに力が注がれる。特別措置が必要

なら念のため用意される。他の裁判手続との調整が行われ、その家族メン

バーたちを支援した担当者たちが証言と支援のため呼び出される。子ども

か親のリスクを評価するのに事実を確定する必要があれば、この段階で行

われる。

(ⅲ)フォローアップの段階―裁判後3か月から6か月の将来に向けたフォロ

ーアップは、それらがどう効いているかを見るために行われている。これ

もまた非当事者主義的であり、もしさらなる裁判や異なる命令が必要であ

れば、この調査と裁判のプロセスが再度辿られることになる。

 

当事者の申立で裁判所に戻ってきた事件は、同じ原則とプロセスに従って指定された裁判官に割り当て、処理される。指定される裁判官は、他と区別できる地位にあり、反復申立を通じたあらゆる制度濫用について警告を受け、それを防止する処置を取らなければならない。

 

 

 

 

11.6 子どもの声を高める

多くの回答は、DAや性的被害の被害者である子どもたちの声が、私法上の子の手続において増幅される必要があると論じていた。子どもの聴取の障壁は、すでにあげた4つの点と同じであった:

・裁判所のプロコンタクトカルチャーは、虐待的な親とコンタクトを持ちたく

ないとか、コンタクトを安全と感じなかったり、コンタクトの間に虐待を受

ける子どもたちが彼らの声を聴取してもらえないという結果を生んでいる;

・リソースの欠如は、私法上の子の手続で、相談や弁護士代理や子ども支援

に、不十分な資源しか使えないということである;

・当事者主義的手続では、子どもたちのニーズ、意思や安全を重視すべきとこ

ろが、大人の主張とそれに対抗する主張、証明責任、technical procedural requirements、親の自己利益ではないかとの疑念を過度に重視することに置き換わってしまう;

・サイロワーキングは、その子どもに何が起こっているかに関する証拠を見落

としたり、その子どもがトラウマから回復するのに役立つ支援が抑制された

り傷つけられるという重大な結果を生じうる。

 

委員会は、国連児童の権利に関する条約12条に従い、子どもたちにはこれらの手続で聴取される機会がもっと与えられるべきであるという見解を取る。私たちは、子どもたちの声が聴かれ、代表され、応えられる方法を進化させるために、Cafcass/ウェールズ FCAsが子どもたちとの関係を築く時間をもち、子どものためにより長期の独立の法的代理ができ、そして家庭裁判所が、子どもたちを裁判所の外で支援してきたサービスや機関ともっと近しく働くことを含めて、広範な回答を受け取った。提出回答は、Cafcaee/ウェールズと地域の子ども支援サービスのリソースを含め、この分野のリソースを改善することを殆ど全会一致で主張している。

 

委員会は、子の処遇プログラムへの改正勧告が――それは見いだされた障壁を克服しようとするもので――、私法上の子の手続で子どもたちの声を高める重要な枠組みを提供することと思う。委員会は、子どもからの聴取と代弁、子どもの代理と支援の選択肢の範囲は、子の処遇プログラムの改正を練り、導く作業の一部としてより全体的に調査するべきだと勧告する。

 

加えて、委員会は、子どもたちと若い人々の証言に関してVulnerable Witness and Children Working Groupが行った働き、法務省にその勧告を可能な限り早く実施するよう働きかけた働きを支持する。委員会は、子の処遇プログラムの改正を練り上げ導く仕事が、ワーキンググループの報告に盛り込まれるよう勧告する。

 

11.7 裁判所での安全と警備

提出された回答は、圧倒的に、DA被害者のため家庭裁判所でとる特別措置、DAの加害者または被害者からの直接の交互尋問を禁止する法令、被害者支援サービスへの調和的で包摂的なアプローチを改善するよう求めるものであった。91章(14)命令を改正して、虐待的申立を防止する潜在的可能性を強化する取り組みにもかなりの支持が寄せられた。上記の家庭裁判所についての、安全を重点的に扱いトラウマに敏感であること、効果的な業務のために必要なリソースを備えること、つながりのあるサービスと調整して働くことといった勧告のもとになった原則はこの文脈にとりわけ強く関連する。

 

子の処遇プログラムの改正に向けた委員会の提案は、特別措置の率先した提供と参加の指示を含む。委員会は、特別措置と参加の指示に関連し、以下の勧告を行う。

・DA法案の、刑事裁判所がDA被害者のために特別措置をとることに関する規

定は、家庭裁判所に拡大されるべきである。当該規定は、DAが主張されるべての事件で適用されなければならない。

・DA法案の諸規定は、DAの証拠がある(自白されたり証明された場合を含

む)とか、DAが問題になっている家庭裁判所の手続で、直接の交互尋問を禁止するよう改正されるべきである。

・DAの主張があれば、当事者が裁判所で一緒になるときはいかなる時も、特別

措置を用いることを標準とすること

・DAの主張があるところでは、被害者とされる人の脆弱性は、トラウマに敏感

なやり方で評価されるべきであり、当事者たちが尋問される方法や、聴聞会

の開催に関するものを含め、第3部AとPD3AAは積極的に適用されるべきで

ある。参加指示では、加害者とされた者が遠隔に証言するよう、考慮が払わ

れるべきである。

・最初の安全保護の質問(Cafcass/ウェールズによる)や調査(改正された手

続の調査局面のもとでの)には、当事者たちが法廷で求めた安全の必要性や

安全確保の方法の議論を含むべきである。

・家庭裁判所の手続に関わる大人と子どもを保護する鍵となる枠組みは、司法

省の犯罪被害者のための規範に基づいて策定されるべきであり、事前訪問と

安全と警備の侵害に対する断固とした対応が含まれるべきである。

 

DAと支援サービスの専門家に関して、委員会は次のことを勧告する:

・当然のこととして、DAの独立アドバイザーたち、DAアドボケーターと精神保健支援ワーカーたちは、彼らが支援している当事者に付き添って法廷に入ることが許されるべきこと

・関連する実務的支持とガイダンスがこの規定に沿うように改正されること

・DAの独立アドバイザーたちDAアドボケーターと精神保健支援ワーカーたち

が、実務指示3AAに定める目的で当事者の脆弱性を評価する際に相談される

べきこと

・すべての家庭裁判所で被害を訴えた者と加害者と訴えられた者の双方を支援

する専門家に関して、適切なモデルで費用対効果を満たすものが探求される

べきこと

 

91節(14)に関連して、委員会は、1989年児童法の規定が規範的ではないものの、そのサブセクションがRe P[1999]以来、判例で例外的な状況にだけ適用があると解釈されてきたことに留意する。91節(14)を、子どもと大人の被害者を危害からもっと効果的に保護できるようにするために、委員会は、Re P事件(91節(14)ガイドライン)[1999]で最も明らかに策定された、91節(14)命令の適用は「例外的に」という要件を逆にするべく、DA法案に対策方法を書き込むことを勧告する。以下の政策目標が明確かつ正確に成文法に規定されることに対応して、これらの対策は、第6条の91節(14)を改正、入れ替え、補足することになる:

・91節(14)命令が、このような命令を受けることが当該子どもの最善利益に合

致するときに発せられてよいこと

・91節(14)命令が、裁判所の結論として、その手続を行いまたは延長することが他方親に対するDAになると判断した場合に発せられてよいこと

・裁判所がこうした命令を適切に発するのに、反復申立を示す必要はないこと

・裁判所は自身の発意で発令してよいこと

・91節(14)発令後、子の処遇命令の申立に許可を認めてよいのは、発令後の状

況が実質的に変化し、許可してもその子どもや他方親を害するリスクがない

ということを申立人が証明した場合に限られること

 

委員会は、さらに、子の処遇プログラムを改正し、虐待的な申立を判別しそれらを素早く即時の結論へと処理する手続を組み入れるべきことを、勧告する。この手続は以下のことを含む:

・先の申立と後の申立の間、および91節(14)命令と申立の許可の間の司法

の継続性;

・裁判所は、さらなる申立があった時は、前もってDAが認められないか慎重に扱う

・裁判所は、こうした事案では、91節(14)命令を出すか否かを自身の判断として積極的に考慮する

・裁判所は、継続するハラスメントや虐待からの保護を与えるために、追加的な命令(例えば、虐待禁止と禁止措置命令(Prohibited Step Order、PSO/訳者注;親に対し親責任の特定の権限行使を禁止する裁判所命令)を出すか否かを自身で考慮する;そして

・これら申立の許可を他方親と子どもたちへの影響を最小限にするよう管理す

ること。

 

これらの勧告が採用されれば、委員会は裁判所の行程が、DAの被害者たちにとって図3のように改善すると予想している:

 

 

【注】

(178)  ‘trauma-aware’によると、DAと他の深刻な加害は子どもたちと成人被害者にトラウマを生じさせること、被害者が裁判所に出廷して証言するときのトラウマの影響、裁判所の手続で再度のトラウマを受けることはできる限り回避すべきであり、トラウマを負った人たちは支援と癒しの機会が必要であることがわかっている。

(179)Cafcass/Women’s Aid Federation of England、 Allegation of Domestic Abuse in Child Contact Cases(2017)-コンタクトの申立でDAの主張があった事案は62%に及ぶ;Cafcass Support with Making Child Arrangements(Manchester) Pilot(2019)-申立ての80-86%で深刻な安全保護措置上の問題と裁判からの不適当な転用が挙げられた。

(180) 委員会は、家庭薬物アルコール裁判所(FDAC)がこうして具体化されており、異なる文脈の子ども保護手続で機能するものではあるが、家事実務家が比較的なじみやすいモデルの一つであると考える。委員会は、FDACモデルが、専門のDA裁判所とその他の問題を解決する裁判所の国際的なモデルに沿って、これらの提案を機能するシステムに導入するうえで引用されることを期待する。委員会はまた、Tier1での司法の継続性がどのように達成されるかが、特に注目されることを指摘する。

 

【長谷川京子】

11.8 コミュニケーション,協同,継続性及び一貫性のためのメカニズム

家庭裁判所におけるサイロワーキング[KH1] による悪影響に関するエビデンスは明らかである。委員会は、家事部における私法ワーキンググループの長官(訳者注:家事部長官は高等法院の家事部門の責任者であり、同ワーキンググループは家事部長官により設置された。)が裁判所と支援サービス間の協調関係を改善するための多くの勧告をしたことに言及するものである。加えて、委員会は、以下の分野につき、コミュニケーション、協調、継続性及び一貫性のために機能するメカニズムを、国および地方レベルで実施することを勧告する。

 

委員会は、国家レベルでのメカニズムは、家事部長官の確固たる支援のもと確立されるべきであると考える。国のメカニズムを実行するための地方レベルでの取決めは、指定家庭裁判所裁判官により監督されるべきである。以下これらのメカニズムの目的は、手続内において、子や成人の当事者の危害の経験及び危害からの保護を手続において一貫して確保し;家庭裁判所における子に関する私法上の事件において、同じ家族に関する他の(法的)手続を認識及び考慮するとともに、逆もまた然るべく、関連する情報を手続間で共有するためのものである。

協調がなされるべき分野は:

・子に関する私法上の事件と他の家庭裁判所の手続(差止命令、財政的手続、

公法上の手続)との間

・家庭裁判所と刑事裁判所との間(特に被害者支援及び保護に関する手続並び

に刑事有罪判決について)

・家庭裁判所、警察との間(特に子に関する私法上の手続への警察の開示に

ついて)及び検察庁(特に同時並行する刑事及び家事手続に関して)

・家庭裁判所、MARAC(Multi agency risk assessment conference)及びその他

の加害者マネジメント委員会との間(特にDAの高リスク被害者及び加害

者に関して、これらのフォーラム(マネジメント委員会)でなされた決定

及び行動計画に関して)

・家庭裁判所、児童に関する規定、第三セクター機関及びサービスとの間

(特に情報の共有及びアプローチの一貫性に関して)

・家庭裁判所、DAの専門家及び児童虐待機関並びにサービスとの間(特に

各サービスが提供できる専門知識及び情報を評価し、家庭裁判所の手続中

にこれらのサービスへのアクセスを容易化することに関して)

 ・家庭裁判所、家庭支援及び治療サービスとの間(特に各サービスが提供で

きる専門知識及び情報を評価し、家庭裁判所の手続係属中にこれらのサー

ビスへのアクセスを容易化することに関して)

 

警察の情報公開に関して家庭裁判所と警察との間の協同関係を向上する必要性に加え、当事者に支払能力のない場合に警察の情報公開の費用負担をカバーする取決めも必要である。委員会は、警察権力が、家庭裁判所及び政策首脳らと共に、当事者が法律扶助を受けられず、他の方法では費用を負担できない場合に、どのように警察の情報開示に係る費用を提供できるようにするかを早急に検討することも勧告する。

 

11.9 リソースに関する問題

委員会は、リソースの欠如が、子やDA及びその他の危害リスクの被害者らをさらなる危害にさらすことから保護するための家庭裁判所の能力に深刻な影響を及ぼしているといった、多くの回答により提起された懸念を認めるものである。子、個々の当時者、法定及び地域のサービスについての、継続するDAに生じる、現在及び将来のコストに関するエビデンスについては、第10章にて述べた。これらには、安全でない命令が失敗した代償として家事司法制度に直接生じるコストも含まれる。委員会は、家庭裁判所が子やDAの被害者の保護をより効率的に行うことを可能とするために、家事司法制度に対する追加的な資金投入について、強い議論がなされるものと確信する。以下これは、中央(Westminster)及びウェールズ州政府が、DAに対処すべくコミットメントすることを明確にし、DAによる家事司法制度及びその他のサービス並びに経済的な資金をより一般的に確保し(注181)、リソースのより生産的な使用態様を示すものである。我々は、以下の機関等に対し、我々の子の処遇プログラムの改定案と合わせて、追加的な投資を行うこと勧告する:

・私法上の子の事件に利用できる裁判所および司法リソース―聴聞(手続)の

リスト化による遅延を最小化して事件を適時に処理できるようにし、決定

が下される前に子と親との関係が長期間中断されることを避け、裁判所が

事実調査のための聴聞手続の行うための十分な時間を確保し、そのような

事件での聴聞において、手続を行う者が効果的に仕事をすることができる

よう行政及び福祉的なサポートを得られるよう保証するため。

・CAFCASS及びウェールズのCAFCASS―保護の問い合わせを含む、私法に

おけるすべての機能を改善するリソースとして;リスクアセスメ

ント(アセスメント実施のスキルアップ及び家族のダイナミクスを理解し

他の家族に対するサービス関係からフィードバックを得るために必要な時

間をアセッサーに提供することの双方);子どもに対する相談(セクション

7の報告者らに、子どもとの関係を構築するために十分な時間を提供する

こと及び子どもの趣向に応じて子どもの願望や感情を引き出すための柔軟

性を提供することを含む);私法上の子の手続にFCA(Family Court Adviser)

の専門家の関与を可能とすること;及び子の声を聞くためにより頻繁に子

の後見人(guardian)の選任を行うことを可能とするため。

・家庭裁判所の施設―特に地裁裁判官の法廷の安全を確保し;全ての裁判所に

おいて別々の待合室、別々の入口、遮蔽及びビデオリンクの提供を標準化す

るため。

・法律扶助―DAの加害者とされる者及び同様に被害者とされる者が法律扶助

を利用できるようにし;(利用するための)証拠上の要件が、被害者や第三

者からの証拠を利用できないような性的虐待から子を保護しようとする親

らにとって利用上の障壁とならないようにすることを保証し;(利用する)

当事者が法律扶助にアクセスする際に行政上の障壁に直面しないようにし、

法律扶助機関による意思決定が裁判所のスケジュールとより協調することを確保するため。

・専門家によるアセスメントのためのファンディング―法律扶助及びその他

の方法を通じて―DA又は子どもへの性的虐待が認められる複雑な事案に

おいて、適切な資格を有する専門家によりリスクの引き受け又は裁判所を

支援するための心理的なアセスメントを指示できるようにするため。これ

らの専門家は、虐待に関係する専門的な実務家又は認定機関又は裁判所の 専門的な委員会から指名されるべきである。

・イングランド及びウェールズ双方でのDA加害者プグラムに関連しての更

なる勧告については、以下11.10。

・コンタクト監督センター―より幅広いサービスの利用可能性を確保し、資力

に応じた価額で、かつ子どもの安全を監視保護するための強力な要件及び

保護すべきインシデントに対応できる強力な要件を確保するため。

・私法上の子の手続における親に対するDAに関連する教育的及び治療的な

事項に係る備え―手続の初期/調査段階(虐待的な行動の特定と利用可能

な行動の変化のための介入の理解を目的とする)、同様に手続後における被害者の回復。DAPPs及びコンタクト監督サービスと同じく、これらのサービスは適切にCAFCASS及びウェールズのCAFCASSに委託されることが適切である。

・専門家によるDA及び児童虐待支援サービス―これらには、DAを経験した

子ども及び成人の家庭裁判所におけるニーズを満たすために、持続可能な

資金及び投資の追加が必要であり、裁判所でのアドボカシーサポートの提

どもの延長、両親が私法上の子の手続において対立している際の子どもの

支援及び必要に応じて裁判所手続後の独立した治療等の提供が含まれる。

 

加えて、セクション7及び37のレポートが、DAについて充分な訓練を受けた経験のあるソーシャルワーカーにより完成されることを確保するために、適切なリソースが地方自治体のソーシャルワーカーに提供されることが必要不可欠である。

  

11.10 DAPPsの見直し

委員会は、何名かの回答者による、DAPPsがイングランド及びウェールズにおいてより広く利用されるべきであり、私法上の子の手続において、(子どもの)両親のための自己照会も認められるべきであるという勧告を承認するものである。いくつかの事件ではDAPPsの有効性についてのエビデンスも存在したが、本委員会はDAPPsの全体的なパフォーマンスはさらに向上させることができると結論付ける。

 

それ故、委員会は、DAの影響による子どもや家族への危害を減らすことに対しより効果的にフォーカスすること及びDAPPsが我々のすべての勧告の根底にある基本原則により支えられるものであることを確保するために、現在のDAPPsの規定を見直すことを勧告する。見直しは、イングランド及びウェールズの主たる利害関係者の代表、法務省、ウェールズ政府、司法、RESPECT(訳者注:英国のDA団体)、ウェールズウィメンズエイド、ウィメンズエイド英国連盟、及びDA被害者のコミッショナーらを含む運営グループにより監督され、報告されるべきである。本委員会は、見直しの結果が新しいDAPPsの仕様について運用する際の基礎を形成すべきであることを提言する。

 

当該見直しは、(委員会に対する)回答により特定され、第9章で説明されたDAPPsの利用可能性と運用に関する懸念に対処すべきであり、以下の事項を含む。

 ・DAPPの規定が、現在の私法上の子の事件にあるリスクとニーズの範囲に対

応しているかどうか;

 ・DAPPsへの適時なアクセスをどのように改善することができるか;

 ・DAPPへの参加が家庭裁判所により命令され、または命令されるべき場合は

どのようなときか;

 ・DAPPのコースの内容、特に別居後の支配(コントロール)や強制的な言動、

経済的虐待及びDA後のペアレンティングに対処することを確保すること;

 ・虐待の被害者である両親及び子どもの経験を組込む必要性、危害を減らすた

めになされた前向きな措置のエビデンスを含む、(加害的な)言動の変化を

どう評価するか;

 ・母親による虐待が特定された場合や同性の両親である場合において、何が最

も効果的な介入であるか;

 ・認定の必要性、(DAPPの)クオリティを保証することの一貫性及びすべて

の加害者に対し家庭裁判所で用いられる介入についての単一かつ標準的な

フレームワーク。

 

11.11 トレーニング

多くの回答から、家事司法制度にかかわるすべての者に対しさらにトレーニングを行う必要があるということが提案された。マジストレート(訳者注:治安判事、英国では社会人ボランティアの場合もある。)に対するトレーニングの利用可能性及び程度は、特に懸念される分野として述べられた。他方、裁判官からのエビデンスからは、彼らが既にJudicial College(訳者注:旧司法研究委員会を母体とする裁判官養成組織、司法大学)を通じ、DAについてかなりの分量のトレーニングを行い、2017年のPD12J(訳者注:子の取り決め及びコンタクトオーダー、DA及び危害に関する審理指針)の改訂に続き、この点に関するプログラムの強化を行ったことが看取された。

 

委員会は、既存のトレーニングが、現在のシステムの効果的な機能に対する4つの障壁:プロコンタクトカルチャー、当事者主義的アプローチ、サイロワーキング及び限られたリソース――によりその効果を損なわれている、または弱体化されているものと考える。本委員会は、上記の勧告による抜本的な改革が無ければ、トレーニングをより増やしてもその効果が限定される可能性があると結論付ける。委員会の勧告に従って子の私法上の手続につき抜本的な改革を行うことに続き、トレーニングの優先度はこれらの改革により具現化されるべきである。トレーニングは、上記で概説したシステムの主たる側面に沿う必要がある。

 委員会は、家事司法制度におけるトレーニングは、以下の分野をカバーすべきであると勧告する。

 

1 包括的改革:

 ・私法上の子の手続に導入し組込み、一貫性のある実施の確保を助けるための

文化的な改革プログラム。The College of Policing(訳者注:ポリス大学、警

察官向けの専門大学)での「DA問題」のトレーニングパッケージは、この

ような文化的な改革プログラムに適したものであると言える。

2 改革された子の処遇プログラムの効果的かつ一貫した実施に必要な主たる知識・分野:

 ・DAに関する深化的理解、DAのジェンダー的性質及び影響、特に威圧的な

コントロール、性的虐待、精神的虐待及び経済的虐待に焦点を当てたもの;

 ・DA を認識すること;

 ・DAが人種、宗教、文化、障害及び移民問題と交差すること;

 ・DAの虚偽主張の発生にかかる正確な事実の理解;

 ・DAが子どもに対し与える影響及び成人と比較して子どもがどのようにDA

を経験するのか;

 ・幼児の発達及び愛着理論;

 ・有病率に対する正確な理解を含む、子どもの性的虐待に対する深化的理解

 ・トラウマとその影響;

 ・リスクアセスメント;

 ・複雑な事案におけるリスク間の相互作用とその区別:DA、子どもの性的虐待、

片親引離し、薬物及びアルコールの乱用、メンタルヘルス、両親間の高葛藤;

 ・性的犯罪及び性的行為の同意に関する法(注182)

 ・脆弱な被害者の特定と対応(刑事実務家に提供されるトレーニングはこの

点に関するモデルとして(委員会に対する)サブミッションにおいて特定された。)及びDA被害者に対するPart 3A(訳者注:https://www.justice.gov.uk/courts/procedure-rules/family/parts/part-3a-vulnerable-persons-participation-in-proceedings-and-giving-evidence) and PD3AA(訳者注:https://www.justice.gov.uk/courts/procedure-rules/family/practice_directions/practice-direction-3aa-vulnerable-persons-participation-in-proceedings-and-giving-evidence)の適用;

 ・ジェンダーロールの想定に起因して生じる無意識の確証バイアス及びこれ

らがどのように人種、障害、年齢、性別及び階級と交差するか;

 ・男性のDA被害者を含む裁判所利用者の多様性及びBAME女性、障害ある

女性、及びLGBTコミュニティによる経験、及び制度上の障壁

 ・DAの加害者がどのように子どもとのコンタクト、裁判所及びその他機関を利用し虐待を継続し、手続に内在する虐待的な利用を示唆・警告するか[KH1] [KH2] [KH3] ;

 ・DA加害者の行動変容を構成するものは何であるか。

いくつかの回答は、トレーニングにつき、どのように、また誰により提供すべきかにつき、有益な提案を行った。以下について考慮されるべきである。

 ・一貫したアプローチを促進するための、複数の専門家及び期間によるトレーニング

 ・次のような専門の提供者によってファシリテートされるトレーニングの提供

  ・the Violence Against Women and Girls sector、同セクターのBAMEサービス

提供者を含む;

  ・DA及び子の性的虐待に関するチャリティ団体

  ・DAコミッショナー
 
 

11.12 ソーシャルワーカーの認定

本報告書に記載されたエビデンスは、DAが申し立てられている、またはその疑いがある、若しくはそれが認知されている子ども及び家族のリスク評価やその他の関連事項につき直接作業するソーシャルワーカーの知識及び技能に対し、重大な弱点があることを示している。イングランドでは、2017年the Children and Social Work Actが、子ども及び家族に関するソーシャルワークに関し、資格取得後の国家的な基準を定めている。資格取得後の国家による認定は、ソーシャルワーカーがこれらの基準を満たすために必要な知識及び技能を有することを確保すべく発達してきた。ウェールズでは、資格を取得したソーシャルワーカーは、DAに対処する際にウェールズ政府の法定ガイダンスと国家訓練フレームワークを遵守する義務を負い、同様に、2014年Social Services and Well-being (Wales) に関連するトレーニングの要件を遵守する義務も負う。委員会は、以下の事項を勧告する:

・ウェールズにおいて子の私法上の手続につきアセスメントを実施するソーシャルワーカーは、3つのグループ――女性に対する暴力、DA、性的暴力――の国のトレーニング枠組みを基準として、トレーニングされること;

・イングランドにおいて子の私法上の手続につきアセスメントを実施するソーシャルワーカーは、国により認定された子及び家族の実務家であること;

・ウェールズでの認定トレーニング及びイングランドでの認定の評価方法の内容は、必要な知識と技能が十分に査定されるよう、DAの専門家らによって見直されること。

 

11.13 モニタリング及び監視

相当数の回答は、DAやその他重大な犯罪にかかる全ての子ども及び被害者を危害から効果的に保護する運用を確保するために、私法上の子の手続について継続的にモニタリング及び監視する必要性が示唆するものであった。委員会は、そのようなモニタリング及び監視は、この分野の懸念に継続的な注意を向けるために必要であることに同意するものである。委員会はこの点について、3点勧告する:

・法務省は、HMCTS(HM Courts and Tribunals Service)、CAFCASS及びウェー

ルズのCAFCASSと協力し、DA、子の性的虐待及びその他安全上の懸念の問題が生じる事件に関するデータを管理し集積するための一貫的かつ包括的な手法を開発・実行すること。

・私法上の子の手続において、子や被害者をDA及びその他の危害のリスクから保護する家庭裁判所のパフォーマンスを監視し、定期的に報告するために、DAコミッショナー事務所内に国家によるモニタリングチームを創設すること。

・地方自治体及びウェールズの地域保護委員会は、家族が私法上の子の手続に関与している場合における家庭裁判所につき、地域ラーニングレビュー(イングランド)、子どもの実務レビュー(ウェールズ)及び家庭内殺人レビューに含めること。これらには、法務省、CAFCASS及びウェールズのCAFCASSからのレビューに対するこれらの寄与を求めること及び家庭裁判所における事件ファイルのレビューを含むべきである。

 

11.14 更なる調査研究

専門家及び組織団体の回答者らは、追加の調査研究のためのいくつかの提案を行った。これらの提案は、以下の事項を含む、DAが主張された事件に対する家庭裁判所の手続及び結果に対する、よりシステマチックで十分なデータの必要性に焦点を置くものであった:

・保護の手続及び結果

・家庭裁判所における手続において、子の声がどのように聴かれ考慮されたか

・DAの主張と、親が引離され(疎外され)ているという主張が一致しているか、またそのような事件の結果

・PD12Jの実施状況(裁判所、地域、審級等の変数による)

・下された命令(両親による関与の推定(訳者注:2014年のthe Child and Families Actのセクション11は、裁判所が子どもについて誰と住むか、どう過ごすかを決定する際に、反証がない限り子どもの生活に双方の両親が関与することが子の福祉にとってよいと推定する。)が採用された前後)

・裁判所が1989年児童法セクション91(14)を実施しているか

 

 裁判所の手続が子どもに及ぼす影響に関してもまた、さらなる調査研究が求められた:

・子どもの家庭裁判所の手続の経験及び手続の子どもに対する影響に基づくエビデンスの吟味

・コンタクトが中断することの影響、反対に事実及びリスクのアセスメントの決定をペンディングし、コンタクトを中断させないことの影響

・裁判所命令の長期的影響、安全及び有効性

 

 委員会は以下の事項を勧告する。

・法務省は、DA、子どもの性的虐待、又はその他の重大な犯罪の主張がなさ

れた場合に、委員会の勧告による改革を実行するに先立ち、改革前のベースラインを提供するために、現在のCAP、PD12J及び(1989年の児童法の)セクション91(14)の実施に関する、独立し体系的かつ遡及的な調査研究を委託すべきである。

・The Child Safeguarding Practice Review Panel(訳者注:政府機関)は、ベースラ

インを提供するため、以降12か月の間、全国の私法上の子の手続におけるDA事案対する実務ベースの法定調査を実施し、改革後の2ないし3年間実務の変化についてフォローアップを行う;そしてthe National Independent Safeguarding Board Walesもウェールズにおいて同様のレビューを行うべきである。

・改革された子の処遇プログラムについて本委員会が勧告した事項をテストするために設立された指導部門は、裁判所の申立、命令、判決のレビューを含むものを定量・定性的な調査方法で確実に評価を行うべきである。

・11.13において設立が勧告された国家による監視チームの任務には、私法上の子の問題に対する改革されたシステムの実施に関する現在又は将来にわたる調査の委託/実施が含まれるべきであり、その資金は、上記権能の効果的な実施を可能とする程度に充分であるべきである。

 

【注】

(181)Rhys Oliver et al.、 The Economic and Social Costs of Domestic Abuse

(2019) 参照。この内務省における調査報告書は、平成29(2017)年3月31日までの12月までのDAに対するコストを660億ポンドと見積もり、うち被害者の身体及び精神的コストを470億ポンド、経済的コスト140億ボンド、50億ポンドを法に定めるサービス及び被害者サービス並びに司法制度に生じるコストとする。これらの数値には、子どもの危害にかかるコスト又は経済的虐待、強制及びコントロールを強いる言動へのコストは含まれていない。これらのコストの一部のみが、家庭裁判所のオーダーにより促進された継続的なDAに起因し、同オーダーの失敗により裁判所に返還されるとしても、本注以下のターゲットに対する財源確保の明確な可能性は存在する。

(182)委員会は、司法制度のために、the Judicial College(司法大学)がCrown Court(刑事法院)における裁判官が利用することができる性的犯罪をモデルとするトレーニングを提供しており、それが深刻な性的性質を有する犯罪に対する裁判を実施するために利用されていることを理解するものである。

 

【望月彬史】