UK司法省報告

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第9章 裁判所の命令

 9.1 裁判所のアプローチ

 

委員会に寄せられたエビデンスは、文献と判例レビューとともに、私法上の子の事件(private law children’s case)で家庭裁判所が命令を作成する際の4つのテーマを浮かび上がらせた。これらは:子どもたちはその別居親とコンタクトすべきであること、制限されたコンタクトは制限なしのそれへ発展するべきであること、共同養育(co-parenting)は奨励されるべきであり、親が裁判所を頼るのは最小限にされるべきこと。これらのテーマは先の章で上げられた障壁に強い影響を受けている。特に、プロコンタクトカルチャー(pro-contact culture)は、子どもたちはコンタクトをするべきである、理想的にはいかなる制限もなしにコンタクトするべきである、そして離別後の子どもの処遇の理想は共同養育であると想定する。リソースの制約は、コンセント命令(consent order)の活用やレビュー聴取の回避に力点を置くのと同様、コンタクトのモニタリングや虐待的な言動を取り扱うための介入の利用可能性と実際の利用を限定する。

 

9.2 子どもたちはコンタクトしなければならない

第4章で述べたように、上級審裁判所は、家庭裁判所に、子どもたちとその親たちの間のコンタクトを維持するためにあらゆる努力を払うよう指示してきた:

「国それゆえ裁判官には、親と子の関係を維持し復元する方法を講じる、端的にはコンタクトを維持し回復させる積極的な義務がある。裁判官は、コンタクトを奨励する積極的な義務がある。裁判官は、いかなるコンタクトもなしえないと望みを捨てる前に、すべての適用可能な代替的な方法に取り組まなければならない。彼は、コンタクトが行楽地で行われたきり途絶えているとか、コンタクトを継続してもその子に利益がないことがたった1回明らかになったからと言って、早まった決定をしないよう注意しなければならない。」(注146)

 

DAの文脈で、司法円卓会議に参加した裁判官たちは正しく、Re L(2000)事件の上級審決定にしたがえば、DAの認定はコンタクトの障害にならないと述べた。PD12Jは、DAが認められた事件で子の処遇(child arrangements)をするときは、裁判所はどんなコンタクトの命令をするにも、その子が「制御できない危害リスク」にさらされず、それがその子の最善利益になることを確保しなければならないと明記している。(注147)司法円卓会議の参加者は、これを「問題の要点」だとして、次のように述べた。

 

「どのレベルならコンタクトを許してよいリスクとして受入れられるのか。どのレベルを「ダメ」とするのか?そこが難しい;むしろDAによる害は明白かもしれないが、(別居親との)関係がないとかほとんどないということには、はるかに大きいつかみどころのない危害がある。」 司法円卓会議

 

虐待を申立てられた親もしくはそれが争点になっていた親個人からの回答は、何らかの形の直接コンタクト、しばしば監視なしのそれが最もよく命じられたことを示していた(注148)。Nagalroは、認定が行われ、虐待的な親が子どもと非虐待的親に引き起こしたり引き起こす危害を認めないと、裁判所が間接的なコンタクトを命じる傾向があることを観察した(注149)。しかし、その他多数の専門家の回答は、総じてDAが見いだされた事件での終局命令と、DAが見いだされずまたは主張もされなかった事件でなされたそれとの間に、ほとんど差がないと報告した。専門家と母親たちは、裁判所が、コンタクトを推進するために、時にCafcass/Cafcassウェールズやソーシャルワーカーが行った評価や勧告も無視することにも懸念を表明した。

「私はCafcassの安全保護報告(safeguarding report)を受け、裁判所はセクション7報告の提出を求め、Cafcassが隔週末と週に1~2回訪問、宿泊なしを強く勧告していたのに、父親は50:50の割合での共同養育を勝ち取って行きました。私の事件で聴取した裁判官は、Cafcassの安全保護措置の報告、Cafcass職員の法廷での証言、父親のリスクと彼の背景に関する報告の言葉を全部無視しました。」           

母親、エビデンスの照会。

 

「私の元夫は、私たち家族を4年間恐怖で支配した後、最後はDAで逮捕されました。彼は「以前のよい性格」を理由に注意処分を受けました。ソーシャルサービスとCafcassはどちらも子どもと監視なしのコンタクトはすべきでないと言いました。私は、虐待禁止命令を申立て、出してもらうことができました。それから私たちは家庭裁判所に行かなくてはならなかった、、、(地方裁判所の)裁判官は私の元夫が暴力的で、支配的で、まさしくDA加害を行ったことを認めました。衝撃的なことに、その裁判官は「父親の権利」についてだけ関心を持ち、とにかく監視なしコンタクトを認めました。」               母親、エビデンスの照会。 

 

記録に基づく調査は、2017年の前10年以上にわたり、間接的なコンタクト命令とコンタクトしない命令がDAの主張のあった事案の約10%でしか出されなかったことを示している(注150)。Harding とNewmam はともに、DAが一般に「多数のうちの一要素」と考えられている、コンタクトなしと間接的なコンタクトの命令は、通常DA、子どもの福祉への深刻な懸念(例えば、薬物乱用、精神疾患)、子どもの異議申立、別居親の態度子どもへの関わりなどを合わせて考えて出されることを明らかにした。

 

上記引用で見たように、エビデンスの照会に答えて寄せられた情報は、養育分担shared careや、子どもが虐待者と主張された方と同居するよう命じられた事件からも引用した。BAMEのDA被害者であった女性と障害のある女性は、彼らの子どもたちが虐待親と同居するように命じられる経験がより多いようであった。

SafeLivesはこういう事例に言及した:

「加害者は、被害者がホームレスで安定した環境を提供できないから避難所で生活しているんだと言いました。裁判官はそれに同意し、彼が仕事についていて彼をサポートする家族があるからと子どもに彼と同居するよう命じました。その被害者は、彼がどんな人か知っていたので子どもたちと別れることができず、間もなく彼のところへ戻りました。」SafeLives

 

多数の母親たちは、子どもたちの性的虐待の訴えが認定されないとき、その子どもは虐待を訴えられた方の親に引き渡されるか、里親のところへ行かされたと報告した。Mosacは、その最新の年次報告の統計が示したところによれば、そこの扱った事件で子どもの性的虐待の訴えを含む事件の7%が虐待親と主張された親と「同居」することに親和的な結果になり、92%で監視なしのコンタクト命令が維持され、コンタクトなしとされたものは1%に満たないと報告している。

 

DAがコンタクトの障害ではないということを述べたとき、司法円卓会議の参加者たちは、これが一部の当事者を驚かせることになりそうだと述べた。我々の回答は、当事者が実際に経験したことが、虐待の認定やその危険性評価と下される命令との間で驚くほどズレていることを示唆していた。裁判所が虐待の深刻さとそれが継続して母親たちとその子どもたちにリスクをもたらすかをわかりながらどれほど無制限のコンタクトを実施させるのかを語るとき、多くの母親(と彼らの代わりの家族)から報告されたショック、失望と怒りを控えめに言うことは難しい。ある母親は「たった一つの目標がコンタクトなのです。それにどんな危害があろうと何が起ころうと」と述べた。彼らは裁判所が保護に焦点を当てるだろうと考えていたのに、裁判所がそれよりコンタクトを優先しているように見えたことに厳しい失望をつたえるものが多かった。

 

9.3 コンタクトは進展するべきである

裁判所が、制限なしのコンタクトが安全でないと考えるとき、関心はその子ども(や非虐待親)に向かう危害のリスクにどう対処するかに移る。これはHarwoodによる調査の一部でインタビューを受けたある地方裁判所裁判官の発言からの引用によく示されている。彼は、通常コンタクトはまずは行われなければならない」と考え、たとえその父親からとても深刻な加害を受けた子どもたちであっても父親を知る権利があると考えた。:「それがこの法律の進路だと思う。コンタクトが安全であるようにするのは何か、、、それはつまり、、、一般的には、仮に何か特別深刻な虐待があったとしても、それでコンタクトが制限されるべきとは思わない。」(注151)

 

裁判所がコンタクト中の危害リスクに対処するのを回避するための主要な選択肢は、直接のコンタクトを、事実認定のための聴取、間接的なコンタクトや監視付もしくは支援付きコンタクト、そしてDA加害者プログラム(DAPPs)の結果が出るまでの間、中止することである。以下の節ではこれらの選択肢について委員会に寄せられたエビデンスをより詳しく検討する。しかしながらそれらの多くに共通するのは、これら選択肢が、直接のコンタクトを回復するまでのステップで、一時的な制限と考えられる傾向にあるということである。それぞれの事件で、裁判所の狙いはできるだけ早く制限なしのコンタクトへ「進展させる」、理想的にはコンタクトを認めることにあるように思われる。一つの例外は間接のコンタクトで、それは暫定の措置であるかもしれないが、長期間にわたって命じられやすいようだ。しかし、上記で論じた通り、間接のコンタクトが命じられるのは比較的まれなことである。

 

9.3.1暫定命令

PD12Jは、DAに関する論争にまだ決着がついていないところでは、暫定命令は、いかなる場合にもその子どもと他方の親を制御できない危害リスクにさらさないよう確保するべきであることに特に注目している(注152)。

 

寄せられた回答はこの条項の適用がさまざまであることを報告した。英国実務家円卓会議の参加者は、多くの裁判官がPD12Jに明らかに反する形で暫定命令を出していること、いくつかの事件では、ここでもPD12Jに反して安全保護のチェックが終わる前に、コンタクト命令や共同養育命令を出していることを説明した(注153)。

 

他方で、幾人かの回答者は――特に父親とその支援者は――裁判所が(それと特に治安判事magistrates)が事実認定前のコンタクトに過剰に慎重であるとの苦情を述べた。父親たちは、コンタクト禁止とか制限付きコンタクトの命令が、母親の子どもに対する「片親引き離し」を許しその結果親子断絶になったり、親子関係への干渉を起こし、回復に長期間を要する結果を引き起こすという懸念を強調した。引離された親の全国協会は、私法上の子の事件で厳格な適用をせず、コンタクト禁止や制限付きコンタクトの暫定命令が出ることで親子関係が厳しくなっているとの情報を提出した。このような懸念は、通常、手続の遅延や事実認定のための聴取に時間がかかることと関連している。あるソーシャルワーカーは、事実認定の手続は、その子どもの時間のものさしに合っていないと述べた。これに関しては、より時宜にかなった事実認定のための聴取が行われることが、知られている多くの問題を軽減することになると思われる。

 

Cafcassとウィメンズエイド英国連盟の事件ファイルの調査では、DAの主張があったときのコンタクト禁止や制限付きコンタクトの暫定命令は多くなく、最終結論に基づき11%発令されたのに対し、最初の聴取時に13%発令された程度である。これらの事件で最初の聴取時の命令と最終の命令の間の主な違いは、42%の事件で最初の聴取時裁判所はコンタクトに関する命令を出さないことである。これがそのままの状態を維持するものの、そのままの状態がコンタクトまたはコンタクト禁止がどのくらい存在することを意味するかについて適切な情報がない。

 

9.3.2 DA加害者プログラム(DAPPs)

加害者プログラムは、事実認定がされて最後の福祉のための聴取の間に命じられる。イングランドではCafcassは認可された加害者プログラムに資金を提供し、そこに委託している。ウェールズにも認可された加害者プログラムはあるが、Cafcass ウェールズはサービスの提供や家庭裁判所への報告に関してそれらに委託はしていない。委員会への回答は、加害者プログラムは虐待親の危険が取り除かれたようなふりをしてコンタクトが許されるようにすることができる装置とみられていることを示唆した(注154)。ある母親の言葉によれば「コンタクトの食券」であると。これは、加害者プログラムがどうデザインされているかではなく、それらが裁判所のプロコンタクトカルチャーの中ではそう見えるということだ。多数の回答で加害者プログラムの適合性、利用とその働きに懸念が挙げられた。

 

いくつかの専門家と機関からの回答は、加害者プログラムの短縮についてコメントしていた。いくつかの地域では(特にイングランドの大きなへき地では)利用可能性が非常に限られていたり、認可された行動変容介入組織がなかったりするといわれる。ウェールズでCafcassウェールズが加害者プログラムに全く資金を提供していないことは、特に多くの回答者から、Cafcassウェールズが認可されたプログラムからの報告の受け入れを拒絶することとともに、語られた。司法円卓会議の参加者は、サービスについて郵便番号くじを指して「それは、どこの地域に住んでいるかとサービスが利用できるか否かは、いわば持ち寄り料理みたいなものだ」と言った。彼らはまたCafcassが委託していない加害者プログラムの状態はわからない、そして彼らの地域では利用できる状態でCafcassが委託している加害者プログラムが存在しない、と強調した。Cafcassが加害者プログラムへの委託をしていないために裁判所に利用可能な選択肢が非常に限られるとはいえ、裁判所としてはCafcassの委託を受けていない加害者プログラムや認可されず同じ基準に従っていないような加害者プログラムからの報告を受け入れるようなことはできない。

 

数人の父親たちはCafcassが女性のための加害者プログラムにはどこにも委託しなかったと苦情を述べた。DAの女性加害者のためのこの種介入の支援が調査に基づき存在するのかは明確でないし、それが対象になるごく少数者に経済的なやり方で十分広く提供されているわけでもない。しかし、はっきりしていることは、DAを犯したと認められた母親が、その子どもと元パートナーに対してなにか継続してリスクをもたらすために利用できるものは何もないということだ。

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Nagalroは、加害者プログラムへのルーティーンの照会は、DAの発見に続けて行われると示した。:

「私たちのメンバーの経験では、子の処遇の命令は通常、DAがあった場合は、犯行に及ぶ親が治療的トレーニングを終了し、裁判所にコンタクトがその子どもと他方親へのリスクなしで行うことができると示せるまで出されない。」Nagalro

 

他の専門家は、裁判所の間で虐待的な親に治療的なことを始める時間を許すかどうかで異なる考えがあると報告した。ある者は、その親を治療の利益を受けさせられるよう手続を延期する用意があったが、ほかは直接のコンタクトに向けて無頓着に進行させたがった。司法円卓会議の参加者の何人かは、加害者プログラムが「あまりに融通が利かず、26週間のプログラムか、さもなくば何もなしである」と懸念を示し、行動変容に対して柔軟性のない、「すべてにワンサイズで臨む」アプローチがあると述べた。さもなくば、虐待親の考え方と刻み込まれた言動のパターンを改めることは相当の時間がかかる。回答は プロコンタクトカルチャーが裁判所をして虐待の深刻さを矮小化させ、リスクを減らすのに有効でも効果的でもない、コンタクトを復元させるためのショートカットを探らせることを懸念すると強調した。

 

Cafcassの統計は、加害者プログラムに委託される数が少ないことを示している:

 


 

これが示すのは、実務では、かなりの数の虐待親が彼らの言動について何もすることを求められないままコンタクトを認められていることである。それ以上に、これがコンタクトへの道筋であるとみられているので、加害者プログラムを終了する割合はむしろ高いにもかかわらず、これら加害者プログラムに委託された全員がサービス提供を受けられるわけでなく(そのプラグラムと彼らの閾値による適格性により)幾人かの父親たちはそのプラグラムを開始し損ねる。母親たちからのいくつかの回答は、裁判所が、加害者には非常に限られた負担しか負わせないのに、しばしばベターな判断に背くようなコンタクトを、母親にはそれを助けて実現させるよう期待することを際立たせた。ある母親は、ある裁判官が加害者に子どもへのわびの手紙を書くよう求めたことを語った。彼はそれをしなかったが、それでも制限なしのコンタクトを続けることができた。

 

DVIPコースを受けた男性のフォーカスグループでは、参加者全員がそのコースに行くことに特典benefitがあると感じ、それで彼らは参加を命じられたが、裁判所は(彼らの)子どもと元パートナーに正しい決定をしたとも感じた。ほかには彼らは威圧的コントロール、彼らの言動への洞察力を得ること、そしてその虐待をもう否定しないことについて学んだ。同時に、彼らはそのコースが、子どもたちとのコンタクトをするために、終えなければならない方法であることをはっきりわかっていた。ある父親は、コンタクトをめぐり元パートナーとの間で紛争が続くことを説明し、こう言った:「彼女に言うつもりだ。:私が彼らに会いに行くか、そのコースを終えるのを待ってから裁判所の条件に従って彼らとのコンタクトを始めるかのどちらかだと」(Respect フォーカスグループ)。

 

元パートナーが加害者プログラムに委託された母親たちは、それにそう肯定的ではなかった。加害者プログラムに受け入れてもらうために、加害者たちは彼らの虐待を知り意味ある変化をする可能性を示すことを支援され、;そしてそのプログラムに参加することで変化が証明されたことになる。多数の母親たちは、しかし、このような基準に付きまとう過ちを報告した。

・虐待的な父親たちは、最小限の参加条件で、適格性を問われることなく、コースに受け入れられていく

・虐待的な父親たちは、「チェック項目を全部満し」、コースを「通過する」と、言動に変化がなく、支配的な言動が続き、自身の虐待を否認し続けていても、彼らの行動への責任をとることを求められもせず、リハビリができたとみなされる。

・加害者プログラム後のリスク評価には、成人被害者や子どもたちの見かたは取り入れられていない。

 

SafeLivesは、サバイバーたちが、加害者たちがハイリスクに分類されてもプログラムに受け入れられ、プログラム終了後の報告が詳細を非常に端折り、参加の結果より参加だけを報告し、徹底的なリスク評価と加害者の言動が変わったのかどうかの判定を欠いていることに懸念をあげたと言った。これらの例では、加害者プログラムが虐待的な親の持つリスクを減らすのに効果があるのかどうか疑問である。

 

最後に、ある法律家は、ある地方の運用として、裁判所が加害者プログラムに事実確認を引き続き行うよう命じて、その時点で手続を終了し、加害者プログラムが終了するとすぐに(子どもの)親たちにコンタクトに同意するよう期待するものがあることを述べた。これは、加害者プログラムが説明責任を求められたり意味ある変化を示すものでなく、単にコンタクトを進めるための救済装置と見られるようになっていることを示している。同様の理由づけが、元パートナーが加害者プログラムに出席し、脅迫と身体的・情緒的・経済的虐待を認めた、その母親の事案で行われた。:

 

「Section7(の報告)を担当したCafcassの職員は私に、裁判官は将来のコンタクトのパターンにDAは関係ないと考えているからDAの訴えには線が引かれていると言いました。そのSection7は、DAのことを触れもしなかった。」 母親、エビデンスの照会

 

9.3.3 コンタクトの支援と監視

先行する調査によると、裁判所はコンタクトを再開するための短期の選択肢として暫定命令interim orderでは監視付きないし支援付きコンタクトを用いるかもしれないが、最終的な命令の一部である長期の選択肢として採用されるのは稀である。Cafcassとウィメンズエイド英国連盟の調査によれば、支援付きコンタクトの命令ではほとんど差がない(最初の聴取時7%、最後の命令時5%)けれど、監視付きコンタクトは、DAの事案の暫定命令で少し多く命じられる(最初の聴取のときに14%、最後の命令で10%)。

 

Nagalroは、監視付き命令を、コンタクトを進めながら虐待被害者を保護することができていいと考えた。

 

「他方の親がその言動に焦点を当てるのに被害者が(まったく無理解にも)他方親と顔を合わせることに苦痛を訴えるような事案では、コンタクトセンターの関わり…は安全に子どもと親の関係を進展させる。」 Nagalro

 

しかし彼らと多くのほかの回答者たちは、リソースの制限がモニターつきコンタクトの利用が限定される主要な理由だと認めた。たくさんの情報提供がコンタクトサービスの不足、特に監視付きコンタクトの不足に言及していた。いくつかの地方(特に大きな田舎)では、監視付きコンタクトセンターで利用できるものが非常に限られるか全くないと言われた。司法円卓会議への寄稿者は、利用可能性と利用料についての問題を次のように認めた:

 

「人々が支払える子どもとのコンタクトセンターが十分ない。それらは高価で、柔軟性がない。コンタクトセンターがあると言っても、17/18週待ちで、70,80ポンドかかり、たいてい受け渡しするほどの時間がない。何のサービスも受けられない。」 司法円卓会議

 

ウェルシュ・ウィメンズエイドは、Cafcassを通じた資金が利用できても、限られたセッションに向けられるだけで、親たちはそのあとも支払い続けなければならないと述べた。

 

無料か支払い易い価格のサービス、特にコンタクトの監視サービスが、プロコンタクトカルチャーに関連して不足しているという多数の結果が上がっている。ALCは「コンタクトの監視期間の短縮が評価として分類されうる、、、裁判所は、コンタクトをさらに進めることが子どもの最善の利益になるとはいえ、安全確保の監視が必要なため実行できないことになる。他方で、CLOCKと多くの母親たちは監視付きコンタクトサービスがないところでは、裁判所は簡単に監視なしコンタクトを認めると報告した。供給の欠如が被害者たちとその代理人たちが監視付きを求めることを断念させられることにつながる。ウェールズでのサバイバーのフォーカスグループのある参加者は、例えば、利用可能なコンタクト監視サービスはなかったから、それに関して質問することもなかったと報告した。

 

第2に、支払い易い価格で利用できたり何らかのコンタクト監視がないと、裁判所はあまり警戒せずに、ボランティアが運営するコンタクト支援とか被害者やその家族に監視を頼ってコンタクトを命じる。

ALCは、コンタクトセンターの閉鎖により、DA被害者たちが、より頻繁に虐待親とのコンタクトを助けるよう求められるようになることに気付いた。これは、リスク評価の結果一方の親が子どもと他方親へのリスクがあると結論された事案で、こうした運用を終わらせようと行われたPD12Jの21017年改正(注155)に反している。Rights of Womensは新しい規定は裁判所に見過ごされ、子どもに対する深刻な身体的もしくは性的害のリスクがある事件にのみ適用されていると考えている。ある母親は2018-19に家庭裁判所を経験し、次のように説明した:「私は私の虐待者と私たちの子どものコンタクトを監視しなければなりませんでした。これは私の心の健康に有害な影響があり、わたしは彼からトラウマを受け続けたうえ、それにもかかわらず私の子どもたちの安全と幸せを守るためにそれをやり続けなければならないのです。」

 

第3に、裁判所は長期にわたる監視付きコンタクトを命じたがらない。上級審裁判所は、安全を守るために長期の監視が求められるような場合に、一般的に直接のコンタクトが命じられるべきという原則はないと強調した(注156)。これは公法領域の事件では起こる。しかし、母親たちからの回答は裁判所の期待は常にコンタクトが監視付きから監視なしへ、できるだけ早く「進展する」ことだと述べた(注157)。ある母親は「長期の監視付きコンタクト命令は非常にまれです」と述べた。

 

けれども、多くの母親たちが指摘したように、加害者の言動に変化がなければ子どもと成人被害者が監視なしで安全でいられるようになると想定する理由はない。「うまくいった」監視付きコンタクトは虐待者のリスクへの懸念をなくすわけでも減らすわけでもなく、単に彼らの虐待的言動を休止させるだけである。被害者たちをコントロールできてきた虐待者たちは見られている間は行儀良くふるまうことができるが、「進展」により監視なしコンタクトになれば邪魔されずに虐待を再開することができる(注158)。実際に、たくさんの情報提供が、監視なしコンタクトで被害者と子どもたちに対する虐待の継続を認めたと伝えている(10章参照)。

 

制限されたコンタクトがすべての子どもたちや成人被害者を十分にしっかり守るものでないという証拠もある。多数の回答は、子どもたちと成人を虐待と威圧的支配から守る目的に対し、コンタクト支援と家族による非公式の監視が妥当性を持つかについて懸念を挙げた。

 

「彼は電話を介して子どもたちにコンタクトすることが認められ、これを彼らを操作する手段として使い続け、彼が好きな時好きなだけ彼らを嫌な気持ちにさせ、悲しませました。彼はコンタクトができる間は彼らを虐待し続けるでしょう。私は常にそばにいることで身体的な加害をくい止めることはできるけれど、心理的虐待の影響とコントロールを止めることはできません。裁判所は威圧的支配を全く理解も制御もしていないのです。」母親、エビデンスの照会

 

同様に、Rights of Womensは、子の処遇における非虐待親の保護は、彼らの身体的安全にだけ焦点が当てられ、子どもを彼らが虐待的だと知っている親に引き渡さなければならないことの強い不安を含めて、継続する威圧的支配や彼らが精神的な健康への危害を受けないことに及んでいないと述べた。

 

多数の回答は、間接的なコンタクトが必ず子どもたちと被害親を守ると想定していることに対し警告を発した。The Suzy Lamplugh財団は、加害者は元パートナーを脅かしストーキングする虐待的な手紙を送ることで、間接のコンタクトを通じて虐待を続けることができるとコメントした。ある母親――彼女の元夫はレイプと子ども虐待加害で有罪宣告を受けた――は、

 

「初めに、最終聴取前の暫定措置として、裁判所は彼に、私の子どもたちに刑務所から月に1回手紙を書くことを許しました。これらの手紙は子どもたちに強い不安を与えました。彼らはとても幼いけれど彼が小児性愛者であることを十分わかっていて、彼の手紙を読んで身体的な不具合が出ました。娘は自傷行為をし、CAMHS(NHSの児童少年向け精神保健部)へ行き、息子は手紙に心底怒り、手紙が来るたびひどい反応を示しました。――それら手紙は、子どもたちにカウンセリングに通わなければならないほどの情緒的な問題を引き起こし、学校と友達との関係で問題を抱えました。                  母親、エビデンスの照会

 

ほかの母親たちはウェブカメラ、FacetimeとScypeを用いたコンタクトが、虐待者には家の中に戻ることを許されたように感じさせるため、非常に侵入的であることが分かったと報告した。この種のコンタクトのリスクにルーティーンに対応させられるのは母親たちである。

 

多数の回答が、監視付きコンタクトをなおも虐待に利用している虐待者たちに言及した。コンタクトセンターの外―そこではセンターの職員によって言動が記録されたり制御されたりすることがない―での威嚇と脅迫;職員が監視付きコンタクト中、子どものネグレクトを見過ごす;監視付きコンタクト中子どもたちに対し情緒的虐待を継続し手懐ける。回答はまた、虐待が起こったことが報告されても、子どもたちはコンタクトセンターに戻るよう命じられたと述べた。この回答者は子どもとして家庭裁判所の手続の「事件本人」であった:

 

「私は家庭裁判所にコンタクトセンターの「監視付き」コンタクトを強制されて、そこで父親が「監視」のもとでさえうまく取り繕って虐待できることに、すっかり落ち込んでしまった。私は正確詳細に述べて特定されてしまうようなことはしたくないが、彼は監視する女の人に聞こえないように静かな声で私を脅し、私たちが「遊んでいる」ように見えるように、私に関連する暴力的でぞっとするような気味悪い筋書きの話を作り、私と遊んでいるように見えるようなおもちゃを使った。私はこれで身元がばれることがすごく怖くなった。他のことも言いたいけど、そうすると私だと特定されてしまう。

こうしたことが起こったとき、私はいつも彼に、大人に言うと言ったが、彼は「誰もお前を信じないさ」と返した。

不幸にもこれは本当だった。この情報がすべて家庭裁判所の聴取に戻されると、私の母がそれらをでっち上げたと貶された。私は事件記録(the case note)で読んだからこれが本当だと知っていると繰り返さなければならない。子どもだった私への影響は、絶対にこれらコンタクトセンターに行きたくないくらい恐ろしいもので、父のセンターでの言動があまりに脅迫的であったので、私は自分の生物学的父に決して会いたくなかった。私は、そこへ行かなければならないと言われ、母がもし私が行かなければ彼女が監獄に送られると説明した時の大変な苦痛を思い起こす。私は事件記録の中で、父の弁護士から母の弁護士に宛て、彼女が命令に従い私を監視付きコンタクトに行かせなければ、公判付託決定手続(committal proceedings)を開始するつもりであると告げる手紙を見たから、これも本当だと知っている。私はまたセンターのドアの前に立って悲鳴を上げて中に入るのを拒んでいたのをはっきり思い出す。事件記録はまたこうした言動が母の「コーチ」のせい、つまり彼女が私にこうするよう教えていたことにされたことを示している。彼女はそんなことはしていない。」   DAの子ども期の被害者、エビデンスの照会

 

ある母親は、一人の心理学者の「コンタクトは相当期間監視付きで続けられるべきである」に始まる報告に従って行われた彼女と彼女の子どもの長期にわたるコンタクトセンターでのコンタクトの経験について証言した:

 

「私たちはそれを7年間やりました。息子は繰り返し学校の先生に彼が安全と感じていないことを打ち明けました。父親は、子どもにひどいナッツアレルギーがあることを知りつつ、いつもナッツの入ったお菓子を与えました。いつもトイレに連れていき、そこでさらに脅しました。コンタクトセンターの職員に話しました。教会のセッティングをしているボランティア全員にも。なんの行動も安全保護も取られませんでした。カウンセラーに打ち明けました。なんの行動もとられませんでした。私がソーシャルワーカーに電話すると、警察に言えと言われました。警察に電話すると、それはソーシャルケアの分野だと言われました。子どもが身体的に傷つけられていなかったので、問題を裁判所に戻す法的支援が受けられず、途方にくれました。7年間行き詰まりました。7年間に父親から繰り返された行為は子どものPTSDを悪化させました。最後の一撃、13歳だった息子はコンタクトセンターで父親から性的暴行を受けました。永久に傷つけられました。これがどう子ども中心なのか教えてください。」              母親、エビデンスの照会

 

このように、委員会が受けた証言は、監視付きから制限なしへというコンタクトの「進展」が子どもたちと他方親を継続する危害リスクにさらすばかりでなく、監視付きコンタクトそれ自体も子どもたちをわかった虐待者から守らないということを示唆している。

 

 

 

 

 

9.4 共同養育(co-parenting)の奨励

家庭裁判所のアプローチの3つ目のテーマは、両親がうまく共同養育できるだろうという期待である。この期待はDAと威圧的支配が背景にあっても抱かれているように見える。多数の回答者が、Sheffied City Councilを含めて、DAの被害者と彼らの以前のパートナーが、DA事案には不適切な共同養育に焦点を当てたSeparated Parents Information Programme(SPIP,イングランド)やWorking Together for Children(WT4C、ウェールズ)のコースに参加するよう命じられると述べている。

 

私は裁判所から『子どものために一緒に子育て(WT4C)』のコースに行かなければならないと勧告され、そこに参加するよう命じられました。それは最悪の4時間でした。それは私には本当に苦しいストレスに満ち、無神経でした。それを主宰していた女性は、私が彼女に話をしていると私にこう言いました。「これはカウンセリングの時間ではない。あなたは裁判のシステムでいえば、負けに負けている状況であり、あなたができる最善のことは、それを裁判所の外に片づけることです。」・・・私の元の加害者はサイコパスで、ナルシストで、それで私は保護命令を彼に対してとっていたんです、こんな人と一緒に子育てや共同養育することなどできません。」  サバイバーのフォーカスグループの参加者

 

共同養育の期待は、コンタクト命令と母親たちにコンタクトを監視させる命令において非虐待親のための保護が限定されていることに反映されている、と先に検討した。英国自閉症協会は、さらにひどい監視付きコンタクトの命令として、自閉症の子どもが同居親なしでは他方親にコンタクトすることはできないのに、同居親に対する、安全上、心理的・精神保健上のリスクにかかわらず、同居親の家で監視付きコンタクトをするよう命じた例を提供した。Southhall Black Sistersもまた、裁判所がしばしばかなり不明瞭な子の処遇の命令を出し、当事者の親の間で決めさせる、これによって虐待被害者を一人にしてその虐待者と処遇をめぐる交渉をさせることに懸念を表明した。DA支援で働く一人はCafcassの、両親が一緒にコンタクトの取り決めを行うべきだという期待は、DA事件では完全に不適切であり、虐待にさらなる手段を与える、虐待者が訴えに使ったり虐待的なメッセージを送る―時には被害者だけが意味を知る隠された言及に使う、両親の「コミュニケーション本」みたいなものだという意見を述べた。

 

裁判所が、両親にコンタクトを支援し共同養育の活動に参加するよう指示することに積極的なのは、虐待的な言動に焦点を当てた介入を限定していることと対照をなす。この裁判所の期待の対比は、虐待加害者たちに向けられる要求が最小限度であるのに、保護された親たちは、どんなにDAや他の子どもたちに対する危害が続くという懸念があっても、彼らはコンタクト命令と共同養育の理想に従う、というものだという情報が多数寄せられた。

 

9.5 裁判所への依存を減らす

裁判所のアプローチにおける4つ目のテーマは、両親に離別後の養育に関し自分たちで決めることを長年にわたり奨励してきていることである。これは、裁判所に来るような事件について、ほかの紛争の解決策を奨励したり、裁判所の決定を受けるより和解で決着するよう奨励することを含む。個人的な合意形成を進めたり親の責任を支援することが全体として適切な事案も一部にはあるが、多くの回答は、それがDA事案にあっては全体として不適切であって、被害者たちと子どもたちは虐待者の力と支配を阻止するために裁判所の保護を必要としている、との懸念を挙げた。

 

2つの主要な問題がこのテーマに関する回答で提起された。:コンセント命令への依存と振返りの聴取が限定的であることである。

 

9.5.1 コンセント命令への依存

私法上の子の事件におけるコンセント命令は、共同養育の推定の結果として、また裁判所が制限されたリソースで処理件数をこなすことを可能にする必要性の両方から、望ましいと考えられている。先行調査が明らかにした主要な点は、子の処遇事件では、最終命令のうち3/4以上が合意によって行われていること、そこではDAを含む事件があたかも合意によってDAの訴えがなかった事件と同様に解決したかのようにみなされていることである(注159)。実務では、それゆえ、DA事件における家庭裁判所によるコンタクト命令の多くがコンセント命令によって行われる。

 

PD12Jは、子の処遇事件で裁判所には、争訟命令(contested order)を出すときと同じ注意を払うよう求めている。子どもに何らかの危害が及ぶリスクがあるか否かを考えるとき、裁判所はすべての事実とそれを支える証拠を考慮しなければならない(注160)。委員会に寄せられたエビデンスではこの選択肢は多くは取り上げられていなかったが、裁判所はコンセント命令を承認する前に、セクション7による口頭または文書の報告を指示する(注161)という規定もある。

 

多くのエビデンスつき回答者は裁判所がコンセント命令に過度に依存していることに深刻な懸念を挙げた。母親たちは数多くの例を挙げて、コンセント命令がわかっているリスクを反映していないにもかかわらず、虐待者、彼らの弁護士や裁判所から、コンセント命令に同意するよう威圧されたことを報告した。

 

「それはものすごいストレス、プレッシャーと恐怖を引き起こします。単に虐待者が何をするか知れないというだけでなく、その命令に従えば最終的にもっと大きな害を引き込むだろうことがわかっているのに、被害者がその命令に従わなければその子どもの監護権を失うというリスクがあるのですから。」 

母親、エビデンスの照会

 

Southall Black Sisteresは、特に、BAMEの女性はしばしば、和解しコンタクトに同意するよう巨大な社会的文化的プレッシャーを受けるとして、コンセント命令を出すまえに、被害者と子どもたちの安全保護を図るためにより尽力する必要があると述べた。

 

専門家の回答者たちも同様に、被害者たちが頻繁に裁判官と相手方弁護士から、DAに関する懸念に焦点を当てないコンセント命令に進むようプレッシャーをかけられると報告した。彼らは被害者たちが、しばしばこれに抵抗できるためのお金も心理的なエネルギーも持ち合わせないと述べた。代わりに、彼らが訴訟を望んだら、彼らがコンタクトに同意しなくても、裁判所は、もしかしたら安全保護を減らしてでも、とにかくそれを命じることを、彼ら自身や相手方弁護士や裁判所によって明らかにすることになる。何人かの回答者たちは、被害者がコンセント命令へ同意すると、子どもたちへの保護の失敗を示すか、または彼らの主張が誇張されたものであったとか「片親引き離し」の試みであった、コンタクトは安全だという暗黙の自白を示すものと受け取られることを指摘した(注162)。

 

9.5.2 レビュー聴取が行われないこと

2014年に子の処遇プログラムが導入されてから、裁判所はレビュー聴取をしようとしなくなった。明らかに、裁判所は、何らかのコンタクトが命じられ後刻裁判所によるレビューがなされるべき場面で、ステップ・バイ・ステップのアプローチをとってきた。レビュー聴取を減らしたことで、裁判所は、コンタクトを「進展させる」ための所定の工程表に合わせ、不安定な状態でコンタクトの命令に進んできた。このアプローチは、コンタクトが最も統制されない形に「進展する」のを早めるかもしれない。

 

「監視付きコンタクトが許される前Cafcassが私の息子のセラピーが長引いていると言った、裁判官が2週間以内にコンタクトすることを命じた、息子はこの時自殺企図になりCAMHSへ送られた。」

母親 エビデンスの照会

 

レビュー聴取を渋ることは、裁判所がそこで発した命令が本当に機能し安全であることを確認するという責任を果たすのでななく、問題があればそれを裁判所に改めて持ち込む親たちに責任を押し付けることである。以下の回答の概要はこのアプローチの不都合を伝えている。母親たち、父親たちと専門家からの多くの回答が、命令は、父母を放置して不適切で安全を害する子の処遇を何とかやり遂げるか、新しい手続を始めさせるのではなく、決まった期間後に自動的にレビューされるべきであると求めた。

 

回答の概要

ある母親は、身体的虐待とレイプを含む威圧的支配の経過の末、夫と別れた。彼女は、その子どもを彼らの核家族から連れ出したことで自分を責めていると語ったが、専門家の助言に従って家を出たと言った。事実認定のための聴取日が組まれたが、彼らが警察の捜査を受けていたために最も大事な主張が省かれた。裁判官は聴取を避けたいと思い、元夫に事実を認めるよう説得した。母親は、これらが「特殊な言語や用語を使ってあまりに技巧的に(法律家たちによって)作られたもので、私が訴えたことは取るに足りないこととされた。」と報告した。Cafcassは共同養育するよう彼女を励ました。裁判官は、直接のコンタクトを命じ、「子どもとわたしがどうなるかを調べるためのレビューをすることは拒否した。」。その母親は、子どもはコンタクト前過呼吸発作を起こし、行きたがらず、父親の怒りの爆発を受け継いだ。その母親は、Children’s  Servicesが記入しようとせず、彼女にはお金がないのに単にもう一度裁判所に行けとだけ助言した時には、無力感を感じたと報告した。その間、父親は、裁判所手続で彼女が彼に同意しないと決まって彼女を脅していた。彼女は、専門家が母親たちに別れるよう言う、だが「裁判所が子ども自身のニーズとも被害者の福祉とも何の関連もなしにこれほどだめな決定をしてさらに悪い状況」に彼女たちを置くという皮肉でその報告を結んだ。

 

 【注】

(146)Re C(子)[2011]EWCA Civ 521 per Munby P at[47].「国の積極的な義務」は、人権法1998の6節に裁判所が、欧州人権条約の権利―第8条で個人的生活及び家族生活を尊重される権利が保障されている―と矛盾しないようにするという条項から導かれる義務である。

(147)PD12J、35パラグラフ。

(148)「直接」コンタクトには、対面コンタクトのほか、電話やビデオ通信のような実質的なコンタクトにあたる形式を含むことに注意。それは第三者による監視付きのことも監視なしのこともある。

(149)「間接」コンタクトは、実質を備えないコンタクト、親が子どもに、または第三者を介して、手紙、カードやプレゼントを送るようなものをいう。

(150)J.Hunt and A.Mcleod, Outcomes of Applications to Court for Contact Orders after Parental Separation or Divorce(2008);M.Harding and A.Newnham, How do Country Courts Share the Care of Children Between    Parents? Full Report(2015)(DA事案の86%で直接のコンタクトが命じられて終わり、コンタクトなしと間接のそれは8%であった);Cafcass&Women’s Aid Federation of England Allegations of Domestic Abuse in Child Custody Cases(2017)(DA事案で結果が分かったものうち57%が監視なしコンタクトを命じられて終わり、コンタクトなしと間接のそれは11%であった);文献の参照は9節12を参照。

(151)J Harwood, Child Arrangements Orders(Contact)and Domestic Abuse-an Explloration of the Law and Practice(PhD Thesis Warwick Universitty,2019)p.162.

(152)PD12J,25-27パラグラフ

(153)PD12J 12パラグラフは、裁判所は、一般的に、子どもの安全を守るためないし子どもを危害から守る保護をかけるためでない限り、安全保護措置が行われた情報がないまま暫定的な子の処遇やコンタクトを命じる命令を出すべきでないとしている。

(154)literature review section9.10.を見よ。

(155)PD12J 38パラグラフ

(156)Re S(A Child)(子の処遇の命令:福祉に関する長期の監視付きコンタクトの効果)、[2015] EWCA Civ689.

(157)literature review section9.10.を見よ。

(158)Perry and Rainey(2007) ‘Supervised, supported and indirect contact orders: Reserch findings’, International Journal of Law, Policy and the family 21:21-47,いくつかのタイプの監視付き命令を体験した親たちへのフォローアップインタビューは、その満足度の低さと、監視付きコンタクト後の問題を明らかにしている。

(159)literature review section 9.6.を参照。Cafcassとウィメンズエイド英国連盟の子のコンタクト事件におけるDAの主張に関する調査(2017年)によれば、初回聴取で出た命令の89%がコンセントによることが分かった。終局命令の86%もまたコンセントによるが、これがDAかDAでない事案かは本調査では分類されていない。

(160)PD12J、パラグラフ8

(161)PD12J、パラグラフ8

(162)こういう理由付けは例えば LD(Re-opening of fact-finding)[2017] EWHC2626(Fam)を見よ。

 

                                                                                                                                  【長谷川京子】

 

 

9.6 結論

多くの回答者は、大多数のケースにおいて、裁判所は、直接のコンタクトを命じる際、DAの主張を無視し、却下し、又はシステマティックに矮小化し、単にDAが継続的な関連性を持たないかのように取り扱っていると述べた。あまりに多くのケースで、DAが認定された場合でさえ、加害者がその認定を受け入れ又はこれに取り組む努力をしない又は最小限の努力しか示していないにもかかわらず、被害者は「気持ちを切り替え」(move on)、コンタクトを促進するよう言われていることを示唆している。そのため、被害者は、虐待者との連絡を含め、時には児童の明示的意思に反してでも、コンタクトが確実に行われるようにする責務を負わされる。これに対し、虐待者は、その虐待行為に対処する責任を十分負うことが見込まれない場合でも、コンタクトの権利を行使することができることが証明された。多くの回答は、このプロコンタクトカルチャーの結果が、家庭裁判所における固定化された性差別の一形態であると認めた。

 

PD12Jの目的にもかかわらず、回答からもたらされる支配的メッセージは、以前の調査と公式統計とともに、DAは、多くの場合、非虐待のケースと異なって取り扱われることはほとんどないということである。

 

リソース上の制約と相まり、プロコンタクトカルチャーの力で、コンタクトと同一のアプローチが、DAの有無にかかわらず、私法上の子の事件にも適用されることになる。その結果、DA事件の大部分において裁判所が行う命令は、DAでない事件の場合と非常に似ており、制限付きコンタクトは、直ちに命令されない場合には、できるだけ早期により制限の少ない又は制限のないコンタクトに進むことが期待される。少数のケースにおいてのみ裁判所は保護措置を課し、これらは、確たる虐待者に対するものとして保護が不十分であり、多くの場合期間が限られていると批判されている。

 

この場合において、コンタクトを促進し虐待者の行動に対処する努力が限定的であることは、虐待者がさらなる介入なしに何とかして虐待をやめるだろうという希望が反映されていると思われる。しかし、このことは、第10章で示すように、子及び成年のDAの被害者に対する裁判所の命令の結果の現実と合致するものではない。加害者に対して自分の行動に対処させることなく無制限のコンタクトを認めることは、子どもや保護者の安全を損なう可能性があるし、損なっている。第11章では、委員会は、改革された手続には、何よりも、裁判所の命令が安全に機能しているかどうかをチェックするための自動的レビューを含めるべきであること、及びDAPPsのレビューが存するべきであることを勧告する。より一般に、委員会の勧告は、裁判所の命令により、子ども及び成年のDAの被害者に対するより効果的な保護を支援するためのカルチャーの変化を促進するよう設計されている。

 

                                                                                                                                    【矢野謙次】

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