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2023年8月の記事一覧

ケイデン法

バイデン政権は前政権で通らなかった女性に対する暴力禁止法(VAWA)を2022年に再承認し、念願のKeeping Children Safe from Family Violence、略して、ケイデンの法を作りました。これは全米の家庭裁判所の危機を終わらせるための最優先課題の一つです。

ケイデンとはペンシルバニア州で実父から面会交流中に殺された7歳の女の子の名前なのです。California Protective Parents Associationはケイデンの母はケイデンの父親が酷く暴力的だったことから家庭裁判所に父子面会は危険だと訴えていたことを報告しています。しかし、家庭裁判所ではその訴えは聞き入れてもらえず、ケイデンは監視なしで父親と面会しなくてはなりませんでした。2018年、ケイデンの父はケイデンの母への報復メモを残し、ケイデンをダンベルで殴り殺し、自分も自殺しました。ケイデンの母はこのひどい逆境に負けず、ケイデンの死は防ぐことができたと家庭裁判所改革に乗り出しました。

残念なことに、このようなケースは例外ではありません。実のところアメリカでは毎年58,000人以上の子どもたちが家庭裁判所から虐待親と暮らせ、面会しろと裁判所から命令されています(Silberg, 2008)。そのため、ドメスティックバイオレンスのサバイバーやアドボケートたちは子どもたちをファミリー暴力から守るためのシステムを作ろうと苦心してきました。

National Safe parents Associationによるとケイデンの法 - Keeping Children Safe from Family Violence Actは、このように危険にさらされている子どもたちを保護するために、親権に関する法律を改善する州に対し、連邦政府からブロックグラント資金を提供します。そのケイデン法の一部を紹介すると、

1.虐待の危険性のある子どもの安全を確保するために、親権や面会について意見する家庭裁判所任命の専門家や外部の専門家はドメスティックバイオレンスや子どもへの虐待(性的虐待を含む)に対する専門知識や適切な経験を有するものに限り認められる。

2.片親疎外を理由に安全かつ効果的であることが証明できない親子再統合キャンプおよび再統合療法の使用を制限し、その治療の安全性、有効性、価値が科学的に検証され一般的に認められていない限り、家庭裁判所はこれを命じてはならない。

3.家庭裁判所裁判官および裁判所職員に対し、子どもへの性的虐待、身体的虐待、精神的虐待、強制的支配、直接的又は間接的なバイアス、トラウマ、ドメスティックバイオレンスと子どもへの虐待が短期的又は長期的に子どもに与える影響、サバイバーと加害者の行動パターンなどについて研修を行う。

このケイデン法は地元ペンシルバニア州から始まり、様々な州に影響を与えています。カリフォルニア州は2017年にケイデンと同じような事件が起こり、Piqui法案が作られています。Family Violence Law Centerの2023夏のニュースレターによれば、2023年8月現在、Piqui法案はカリフォルニア州上院司法委員会で全会一致で承認されています。この法案の主要な内容は子どもの監護手続きにおける家庭裁判所のトレーニングと親権制定の証言に携わるドメスティックバイオレンスや子どもの虐待に特化した専門家の導入です。

なお、2023年8月の時点でケイデン法を施行させた米国第一番目の州はコロラド州です。同州のケイデン法は、親子再統合キャンプへ参加させることを命令することを規制し、裁判所のドメスティックバイオレンスや子どもへの虐待の研修を義務化することになりました 。

(Reference)

California Protective Parents. Retrieved from https://www.caprotectiveparents.org/federal-laws-to-state-laws

National Safe Parents Association. Retrieved from https://www.nationalsafeparents.org/

Family Violence Law Center. Retrieved from Spring & Summer News from the Center (mailchi.mp)

Silberg, Joyanna (2008). How Many Children Are Court -Ordered Into Unsupervised Contac With an Abusive Parent After Divorce? Retrieved from http://www.leadershipcouncil.org/1/med/PR3.html

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